88話 9999京。
88話 9999京。
「単純計算では1垓を超えてもおかしくないことから察するに……どうやら、そこに壁があるみたいやな。存在値999の時と同じような」
理屈としては理解できる。
だが理解したところで、状況が好転するわけではない。
センは額を押さえ、短く息を吐いた。
「これは……どうなんだ? 一応、アマテラス・センエースは完成したっぽいけど……」
トウシは、疲れた顔で首を横に振って、
「現状、バーチャに完全に支配されとるから、むしろやばい。太陽は正しく運用すれば命を豊かにしてくれる光やけど、悪意をもって振り回せば、この世の全てを燃やし尽くす地獄の業火にもなる」
言葉一つ一つが、重く胸に沈んでいく。
今のバーチャは、一言で言えば、
『9999京という莫大な存在値と、プライマル・センエースの戦闘力と、無限の生命力を持つ上で、センエースに対する悪意がカンストしている怪物』
センは、唇を噛みしめたまま、視線を伏せた。
「これは、どうすりゃ、トゥルーエンドになるのかしらね」
「バーチャを殺して、アマテラス・センエースを解放する。もっと言えば、バーチャと、アルテマ・ワールドエリミネイトを殺して、テラスを完全開放する。それがトゥルーエンドに到達するたった一つの冴えたやり方」
センは肩を落とし、乾いた笑いを漏らす。
「明確ではあるんだけどねぇ……ただ、方法がねぇよなぁ……俺が380京ぐらいで、お前が300京ぐらい。で、相手が9999京だろ? きっつぅ……やべぇ……お腹いたい。ちょっとトイレ行ってくるから、かえってくるまでに、なんとかしといて」
現実から大胆に目を逸らす鋭利な軽口。
だが、その裏にある焦燥と絶望は、誤魔化しきれていない――
と、その時だった。
バーチャの頭上、虚空に亀裂が走る。
空間そのものが裂け、歪み、異質な気配が溢れ出した。
異変に気づいたバーチャは、反射的に顔を上げ、全身の魔力とオーラを一気に高める。
だが――
「遅いね」
亀裂の向こうから躍り出た獣影は、思考よりも先に動いていた。
過剰に鋭い牙が光を反射する。
バーチャが反応する、そのほんの一瞬前。
喉元に、牙が突き立てられた。
比喩ではない。
肉と骨を噛み砕く、生々しい感触とともに、ガブリと喰らいつく。
「ぎぃい! せみ……はらっ――」
牙が深く食い込み、首は半ば裂けたまま、噛みついた顎に吊られるように宙へ持ち上げられる。
さらに――
「よっと」
軽い掛け声とは裏腹に、動作は容赦なかった。
蝉原は、そのまま噛みついた位置からバーチャの頭部を掴み、グイっと引き抜くようにして、完全に首から引きちぎると、
そのまま、先ほどのテラスのように、でっかく口を開いて、腹の中におさめる。




