77話 完璧なる循環。
77話 完璧なる循環。
「色々と複雑なんだな」
「そうでもありませんよ。バンプティを名乗ってゼノリカに潜入していた裏切り者――P型センエース0号が、破壊衝動ソルの無差別暴走を抑止する安全監視モジュール《ナイア》と制御プロトコルを共有し、統合接続した……それだけです」
事実を列挙する語り口は淡々としている。
自分が何者であるかを、迷いなく言い切っていた。
そんなナイプティに、センは、死んだ目で、
「言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい理数系だな。……ま、それはともかくとして……『裏切り者』、ねぇ……あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ」
中身のない言葉で、どうにか理性を保とうとする。
世界をケムに巻くはずのトーク術が自律神経の支えになりえるという奇妙な現象。
「ふふ」
ナイプティの口から、短い笑いが漏れる。
それは嘲笑でも挑発でもなく、
ただ一度、感情を外に吐き出しただけのような微笑。
そこで、ナイプティは、視線を遠くへと投げる。
「2垓年の間……私も、色々と準備を進めてきました。まあ、やっていたことと言えば、シュブの盾を磨いていたことぐらいですが……それだって、陛下が回収した『シュブニグラスハート』を密かに横取りしていたというだけで、私自身が大きく動いたことは少ないですけどね。蝉原陣営が、この2垓年の中でやってきたことを、おおざっぱにまとめると……『陛下が回収した、無数の因子やカケラを丁寧に盗む』といった感じです」
長い説明のあいだ、
ナイプティの口調は終始穏やかだった。
だが、その内容は、
時間と裏切りと執念の積み重ねを、
静かに示していた。
「できれば、トリデ因子も回収したかったのですが……それは、流石に無理でしたね。一応、私やゼンの中にもあるので、それを利用させてはもらいますが、この程度では、『最高位のオメガバスティオン』を使うのは無理ですかねぇ」
そう言いつつ、ゼンドウの胸に手を当てるナイプティ。
触れた瞬間、空気が変わる。
全てを理解している様子のゼンドウは、
ナイプティに対しては特に何も言わず、
ひたすら、『センエースの挙動』を警戒するばかり。
「果たして……完全なる循環に届き得るのか……見届けさせていただきますよ、陛下」
その言葉には、忠誠とも観測者の冷酷さとも取れる響きがあった。
スゥウ……と、ナイプティは、ゼンドウの中へと溶けていく。
存在の境界が曖昧になり、
意識は切り離される。
そのままナイプティは、
固有の自我を棄てて、ただの盾……装備品として、
ゼンドウのモノとなったのだった。
予告:明日の朝からセレナーデを投稿します。
本編全体+最終章にも大きく関わる物語ですので、
是非とも読んでいただきたいです(*´▽`*)




