76話 狡猾蝉原は敗北を確信している。
76話 狡猾蝉原は敗北を確信している。
センの言葉に対して、ゼンドウが、
「暴露のアリア・ギアス追加。2垓年を積んだのは君だけじゃない。その『実質的な負荷』を受け止めたのは『君の魂』だけ……しかし、蝉原サイドの人材も同じだけの時間を『運用すること』は出来た。僕は蝉原陣営というわけではないけれど、ずっと、蝉原の嫌がらせは受け続けた。作戦を練る時間も、準備をする時間も潤沢にあった。だからできる。君を出し抜くことが」
丁寧に、丁寧に、入念な準備をした上で、
蝉原陣営は、今日を迎えた。
時間という濁流に死に物狂いで抗い続けていただけのセンが、
情報戦の盤上で遅れをとるのは必然。
さらに言えば、今だって、ゼンドウは、ずっと入念に積み続けている。
すべてはセンエースを、蝉原を、プライマル・センエースを殺すため。
『悪』を全て排除するため。
そのたくらみを、
――蝉原は支持する。
ここではないどこか、遠く離れた場所……『認知の領域外』で全てを睥睨している『狡猾蝉原』が、ニタリと黒く微笑んで動き出す。
蝉原が取り出したのは、一枚の魔カード。
その正式名称は、原初魔カード『裏切』。
「さあ、センくん……俺の『あがき』を、君はどう受け止めてくれる? どうせ、俺は負けるだろう。けれど、思う。どこかで……これだけやったのだから、勝ってもおかしくないのではないか、と。そんな俺の淡い皮算用を……君は、きっと、造作もなく打ち砕く。ふふ……狂おしいじゃないか」
ゆっくりと、バラードでも歌うみたいに、
蝉原は、原初魔カードを破り捨てた。
★
――ゼンドウがシグレを飲み込んだ直後、
空間が一瞬だけ歪んだ。
そして、ゼンドウの目の前に、
『全身をバキバキに鍛え上げた爺さん』が出現する。
研ぎ澄まされた刃のような筋肉と、愚直な年輪を刻んだ顔。
ただ立っているだけで、周囲の気配が押し潰される。
彼の顔を見て、センは、
一瞬だけ目を細め、
「……よ、よう、バンプティ。……久しぶりだな。はうあーゆー」
『なんでここにバンプティが?』という当然の疑問符の中をさまよいつつも、センは、うかがうように、自分を整えるように、丁寧なあいさつを繰り出す。
そんなセンに対し、その老人は、恭しく頭を下げて、
「今の私はP型センエース0号ですよ、陛下。もっと言えば……今の私はナイプティです」
ナイプティの声は落ち着いていた。
極めて冷静で、揺るぎない意思と覚悟がそこには見えた。
「そ、そうか。……色々と複雑なんだな」
センは軽く天を仰ぐ。
もう、何が何だか分からない。
いくらなんでも、一気に色々と起こりすぎた。




