63話 芸術的な自殺行為。
63話 芸術的な自殺行為。
――『オーバードライブ・サイコジョーカー』。
それは、『究極超神センエースによっておさえられているフッキの潜在能力』を部分的に解放する力(もし、この先、フッキの制限が解除された場合、自動的にコードが書き換えられ、純粋なサイコジョーカーの上位互換となる)。
精神的負荷を180分の一に分散する事でしか発動できない狂気の可能性。
「ぐぅぎぎぎぎぎぎいぃいいいい!!」
サイコジョーカーをはるかに超える精神圧迫。
驚異的な精神力を持つゼッキが、180に分散させたとしても、
10数秒しか持たせられない、怒涛のSAN値喰い。
その存在値は、およそ2兆。
さらに!!
「虹を集めた虚空。玲瓏な蒼穹。幻想の戒光。貫くような銀河を見上げ、煌めく明日を奪い取る。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。たゆたう銀河を彩り(いろどり)し、オボロゲな杯を献じながら。――俺は、ゼン。混沌を殺す狂気の閃光!」
目、耳、鼻から、大量の血を噴き出しながら、
ゼンは爆速の早口で鉄心コールを積み上げていく。
イカれた無謀。
今のゼンの耐久力で、オーバードライブ・サイコジョーカー中に鉄心コールを重ねるのは、成功確率1000%の芸術的な自殺行為。
だが、それでもゼンは叫ぶ。
ここで負ければ、大事な女が死ぬ。
その一点だけが、彼の身体を無理やり前へ押し出していた。
目や耳だけではない。
全身の穴という穴から血が噴き出し始める。
それでも、積み切った上で、ゼンは放つ。
「死屍累々・凶乱舞・波動一閃!!!」
全身全霊。
今の自分にできるすべてを賭した、渾身の一撃。
その最高最強の一閃を、
――センは、
「お姫様を守るためなら、王子様は限界を超えられますって? 感動的じゃないか。だが、無意味だ」
ほんの少し気合いを込めただけの裏拳で、
ゼンの一撃をサクっと処理してみせた。
その光景を前に、
ゼンの口から、かすれた声が漏れる。
「な……ぁ……」
全身から血を垂れ流しながら、
ゼンはその場にバタリと倒れ込んだ。
流石に力を使い果たしている。
限界を超え、さらに超え、なお超えた果てに放った一撃。
それを一蹴され、心に、ビキリとひびが入る。
まだ折れてはいない。
だが、折れていないだけの状態。
そんなゼンに、センは容赦なく声を投げる。
「どうした? 立てよ」
煽るような口調だった。
その瞬間、
試験官のミハルドが割って入る。
「もういい、終わりだ。流石に、その状態で続けさせるわけにはいかない。貴様の勝ちだ、177番――」
「黙れぇええええ!!」
『舞い散る閃光センエース』のバチギレ怒号が、ホールを震わせた。
その声だけで、ミハルドの鼓膜は完全に破壊される。
衝撃波に吹き飛ばされ、壁に激突し、そのまま意識を失った。
気絶したミハルドに、
『意識が回復しない程度の回復魔法』をかけた上で、
「子供がまだ食ってる途中でしょうが」
呑気にそうボケてから、
「さあ、立とうぜ、ゼン。まだ行けんだろ? まだ行けるさ。俺は詳しいんだ」
追い立てるように言う。




