57話 5次試験の内容。
57話 5次試験の内容。
「――五次試験を開始する」
抑揚のない声。
淡々と、だが一切の私情を挟まず、試験官としての役目をまっとうする宣告。
ホールに集まった空気が、一段階、張り詰める。
その間も、センの視線はゼンから離れなかった。
睨みつける目に、敵意とも焦燥ともつかない光が宿る。
ゼンはその視線に気づきながらも、正面を向いたまま、わずかに肩を強張らせていた。
ミハルドは、無言でアイテムボックスに手をのばし、『くじの箱』を用意する。
箱の中で、紙片が乾いた音を立てて触れ合った。
「試験内容は一対一のシンプルな決闘。生死は問わない。勝った方が合格。負けた方は不合格。組み合わせは完全に運」
簡潔な説明。
余計な補足も、感情的な言葉もない。
運命を切り分けるには、十分すぎるほどの情報。
説明を受けたゼンは、心の中で、
(おいおいおい……マジかよ。その内容だと、シグレと当たった瞬間、終わりじゃねぇか……)
順番に、全員がくじを引く。
紙を開く音が、やけに大きく聞こえた。
ゼンは、心の中で、
(神様……頼む。一生に一度の願いだ……シグレと当たるのだけは勘弁してくれ)
センとゼンが、同時に、1と書かれた紙を引く。
互いの手元を見て、ゼンが、
(相手はシグレじゃねぇ……よかった……)
一瞬ホっとしてから、
(でも、177番が相手かぁ……このニーサン、なんか底知れなくて怖いんだよなぁ……)
と渋い顔をした。
センは、心の中で、
(……なるほど。確かに、ウザってぇ運命力が働いているようだ。……魔法を使ってハルスと当たるように調整したが、かき消されていやがる……)
続いて、シグレとセイラが、2と書かれた紙を引いた。
シグレは一瞬だけ目を伏せ、セイラは小さく息を吐く。
それぞれが、引き当てた運命を静かに受け止めていた。
その流れの中で、ハルスが眉をひそめた。
「……おい、俺の紙には何も書いていないが?」
紙を指で弾き、ミハルドに突きつける。
「ならば、貴様は合格だ。運も実力の内。おめでとう」
ミハルドは一切視線を動かさず、即答した。
事実だけを告げる、冷たい声。
「そいつはありがたい限りだが、しかし退屈だな。……なんなら、あんたと戦ってもいいんだぜ。『優れているのは運だけじゃない』という事実を魅せつけてやるよ」
そう言いながら、ハルスは剣を抜き、ミハルドに向ける。
刃先に込められた魔力が、かすかに空気を震わせた。
ギリギリ、ピリピリと、ホール全体に重たい緊張感が走る。




