53話 トウシにしかできない不可能。
53話 トウシにしかできない不可能。
トウシは、ため息交じりに絶望の前提を口にしてから、
続けて、
「セン……おどれは、今まで、あらゆる絶望を、その根性一つで切り抜けてきた」
「違うね。知恵と才能と美貌で切り盛りしてきたんだ」
「うるさい」
「きゃいんっ」
『一喝されてプルプル震えているセン』を軽蔑の目で見つめながら、
トウシは、
「けど、今回ばかりは、正直、対応のしようがない。『本気のセンエースを倒さなければいけない』という絶望は、このワシですら『不可能』と断言できる狂気の領域」
声の低さが、言葉の重さを際立たせる。
可能性を探し続けてきた者が、初めて明確に線を引く瞬間だった。
そこで、センはニっと快活に笑い、
「何言ってんだよ、トウシきゅん。ゼンごときでは不可能だが、お前ならいける。これはお前にしか出来ない不可能だ。というわけで、どうにかしてくれ。俺はもう闘わん。頭を使うのはお前に任せた。蝉原と相談して、何かしら、この状況をどうにかする方法を見つけてくれ。そして実行してくれ。俺は寝る」
そう言って、マジで目を閉じて、ZZZと寝息をたてはじめるセン。
無責任の権化となった『現実逃避真っ最中のセン』を尻目に、
蝉原が、トウシに、
「……本当に完全に不可能なのかな?」
「論理的には不可能。『センに勝たなければいけない』というルールをクリアする方法はない。センエースには誰も勝てん」
断定は揺るがない。
この条件を前提とする限り、トゥルーに届く出口は存在しない。
「ただ、皮算用はできんこともない」
「ほう、ちなみに、それはどういう皮算用かな?」
「センが究極超邪神アポロギスを殺した時と同じ理不尽。……ルール(前提)を無視して元凶を殺す。テーゼとアンチテーゼの先にあるジンテーゼをつかみ取る。ようするには……シュブを殺す」
「……」
「本気で戦わんと、シグレが暴走してシュブ化する……それが大問題。けど、せやったら、アホほど強くなって、シュブを殺し、シグレを救う。それでオールエンド」
状況を整理するように語られた結論は、あまりにも直線的。
他の選択肢を切り捨てた末に残った、唯一の筋道。
そこで、センが、狸寝入りをやめて、パチっと目を開けた。
天井を見つめていた視線が、ゆっくりと現実へ戻る。
「いつだって俺の最終解決策はパワープレイなんだな。アホみたいだぜ」
自分自身を嘲るような声音だったが、そこに強い否定の色はない。
それが自分の性分だと、とうに理解しているから。




