50話 すごくエッチな本。
50話 すごくエッチな本。
「知らん。問題なのはそこやない」
「そうだな。『すごくエッチな本』の方が京倍大事だよな。いったい、どんな本なんだろう……表紙がシューリなのは確実として……」
「……おどれ、下ネタ嫌いなんちゃうんか?」
「俺の中にもラインってのがあるんだよ」
そこで、蝉原が、ニタニタ笑いながら、
「マシンガンピストンでヤリマンの膣を効率よく破壊する特集……みたいな感じの下ネタが、セン君にとっての『ギリギリ許せるライン』なんだよね、確か」
蝉原の声は非常に楽しげだった。
悪意と愉悦が混ざり、わざと過剰に品のない言葉を選んでいる。
センの反応を引き出すためだけに、平然と、人としてのラインを踏み越えてくる。
「確か、じゃねぇよ。もはや、お下品とかいうレベルじゃねぇ。いま、お前が口にした概念は、下ネタどうこうじゃなく、ただの拷問特集じゃねぇか」
「わかってないねぇ、センくん。破壊こそ最大のアガペーにしてエロスなんだよ」
「……その哲学は、ちょっとムズすぎるな」
しんどそうに溜息をつくセンの様子を眺めながら、
蝉原は楽しげにけらけらと笑った。
理解されることを初めから期待していない笑いだった。
そこで、張りつめた空気を断ち切るように、
トウシが小さく咳払いを挟み、場の流れを引き戻す。
「……もうわかると思うけど……おどれは、『ゼンに負けるため』に、コンプ報酬で『ゼンの原初補正をすこし増加して、もう一度、最初からやり直す』を選択した。何度も、何度も、何度も……その数が100万回以上。その結果、ついに、無限の可能性をも超越した……究極の未完成形態『究極超神化9』に届いた」
淡々と語られる事実の一つ一つが、常識から逸脱していた。
積み重ねられた回数の異常さが、センの歩んだ軌跡を無言で物語る。
「ふむふむ……やはり、俺は格が違ったということだな」
センは軽く顎を上げ、冗談めかした口調で応じる。
続けて、蝉原が、
「流石、センくん。俺達には出来ないことを平然とやってのける、そこに痺れる憧れる」
大げさに肩をすくめ、賞賛を惜しみなく投げる。
と、そこで、センの表情がふと固まり、思考が急転する。
「……あれ? ダメじゃない? 俺、ゼンに負けなきゃいけないのに……なんか、死ぬほど強くなってない? これ、俺、ゼンに負けられなくない?」
「そう。おどれは、2垓年のタイムリープの中で、『ゼンを強くする』よりもはるかに速い速度で成長してしまった。この点はおどれがエグすぎるという点以外にも、蝉原の『嫌がらせ的な功罪』も介在しとる」




