49話 コンプリート報酬。
49話 コンプリート報酬。
映像の中で、鍵の一つ一つが、わずかに強調されるように明滅する。
それぞれが、異なる未来と過去へと繋がっていることを、無言で示していた。
センは黙って画面を見つめていた。
喉の奥が乾き、言葉が出てこない。
「コスモゾーンダイアリーを読むと、断片的に、記憶が補完される。全部ではないけど、おどれが2垓年かけて積み重ねてきた『タイムリープの歴史』を思い出すことができる」
トウシの説明は淡々としていた。
だが、その内容は、あまりにも重い。
映像の向こうに映る本と鍵は、ただの道具ではない。
セン自身の時間と選択、そのすべてを背負った証そのものだった。
「なるほど、つまり俺は脱げばいいんだな?」
「もちろん、そうや。そんな言うまでもないことを、得意げに言わんでええから、黙って聞け、カス、ボケ」
「……はい、ごめんなさい」
涙目で謝るセンを尻目に、トウシは解説をつづけた。
「記憶を取り戻したおどれは、第十アルファに飛んで、過去の自分をボコボコにして、腹をかっさばいてカギを埋め込んだ」
「そこだけきくと、だいぶ猟奇的ぃ」
「おどれの人生は、基本ずっと猟奇的やろが」
続けて、トウシは、
「過去の自分の腹に鍵を埋め込んだ直後、他のタイムスリップ用のカギを、特定タイミングで、特定の人物が拾えるように設定した……ことで、おどれは、世界から『コンプリート報酬』をもらうことになる」
全ての処理を終えたあとで、センの頭に響いた世界からのメッセージ。
それは以下の通り。
《ラウンドコンプリート 願いが一つ叶います。次の中から選んでください》
・この世に存在するすべての生命体の頭の中から、センエースに関する記憶を消す。
・童貞を棄てる。
・すごくエッチな本が読みたい。
・父ティーダを生き返らせたい。
・完全に死ぬ。
・ゼンの原初補正をすこし増加して、もう一度、『最初』からやり直す。
・もう面倒なので、ここで『全て』を終わらせる。
・
文字面だけで、世界の悪趣味が透けて見えた。
救済と破滅が同列に並び、かつ、軽薄な欲望も堂々と混ざっている。
選択肢の順番に意図があるのかどうかすら、判断がつかない。
最後の空白も、色々と白々しすぎてイラつくレベルで、
センは、小さく舌打ちして、
「……色々言いたいことはあるが……俺のおやじって死んでんの? 転生する前は、ギリ生きてた気がするんだけど。ほぼほぼ会ってないから自信ないけど」
「知らん。そんなことに興味はない。問題なのはそこやない」




