41話 産まれてから、冒険者試験をクリアするまでの全て。
41話 産まれてから、冒険者試験をクリアするまでの全て。
センは、沈みかけの太陽を、しばし無言で眺めた。
その後、背後へ視線を向ける。
不可視化を解除した蝉原に、
「さて……それじゃあ、そろそろ、お前が知っていることを教えてもらおうか。4次試験まではどうでもよくて、次の5次試験が大事……と言っていたが、その辺、詳しく。もし望むなら土下座でもクツ舐めでも、何でもしてやるから、できるだけ丁寧に教えてくれ」
軽口のようでいて、視線は鋭い。
冗談めかした態度の裏に、本気で情報を求める圧があった。
「ああ、もちろん、教えるよ。というか、知っておいてもらわないと困るんだよね」
「ほう……その心は?」
「まず、前提として理解しておいてもらいたいんだけど、君は何度も冒険者試験をクリアしている」
「……え、そうなん?」
「うん。で、クリアして、全部なかったことにして、最初からやり直して、またクリアして……というのを100万回以上やっているんだ」
「全部なかったことにってのは……どのレベルで?」
「君が産まれてから、冒険者試験をクリアするまでの全て。つまりは『セン君の人生と神生の全部』だね。『センくんが第一アルファに産まれ堕ちた瞬間から、この先に待つ、とあるターニングポイントまで』を、君は100万回繰り返している。だから、現状、君は実質的に『2垓年以上』は生きていることになる」
「……処理しきれない情報量だな……ボケであってもらいたいが……」
「ボケじゃないよ。俺は嘘をつかないからね」
淡々とした口調が、かえって重みを増す。
「そうなんだよなぁ……こいつ、こういう嘘はつかないんだよなぁ……悪人のカリスマなんだから、もっと嘘つきであってくれよ……」
センは額を押さえた。
信じたくはないが、否定もできない。
「本物の嘘つきは、大事な嘘以外、真実を語りたがるものなんだよ。その方が『嘘が映える』からね」
「言われなくても知ってるよ。だから言ってんだ――ん?」
その途中で、センは言葉を止めた。
空気が歪んだわけでも、魔力を感じたわけでもない。
それでも、確かな違和感が、神経の奥を撫でた。
次元と時空を無理矢理かき混ぜたような感覚。
理屈では説明できない、不快な圧迫感。
グ……
腹の底に重い圧がのしかかった直後、
視界が反転した。
「げっ……引きずり込まれた?!」
気づいた時には、空間魔法の中にいた。
センと蝉原以外、誰の気配もない。
それはそれは、とても真っ白な空間だった。




