39話 ……気に入らねぇ野郎だ。
39話 ……気に入らねぇ野郎だ。
ハルスは舌打ちし、
「ちっ……なら、これでどうだ」
そう言いながら、両手に魔力を集中させる。
空気が震え、魔力の奔流が形を成していく。
「サテライト・エクスカリバー二式!!」
宣言した瞬間、ハルスを囲むように、二つの聖剣が召喚される。
光を放ちながら浮遊するそれは、主を守るように配置され、
念じるだけで自在に操れるオールレンジ兵器。
「本気で殺しに行くぜ……だから、てめぇも見せてみろよ……てめぇの上限」
聖剣が、ファンネルのように射出される。
軌道を変えながら、執拗にセンを追い詰めていく。
センは軽やかに回避しながら、冷静にその動きを見切り、
「いい念力だ。高い練度……丁寧に磨いてきたのがうかがえる」
「そうだ! 死ぬ気で研磨してきた! この世の全てを殺すために! てめぇはどうだ! なんのために力を得た! どれほどの高みにいる?! 俺に教えろ! てめぇの底を!! その渇きを!!」
複雑な感情の全てを込めて、ハルスは叫ぶ。
ハルスは、どこかで、センエースに、『高次の期待』を抱いていた。
当人はまったく自覚していないが、ハルスは、センに、
『こいつなら、世界を変えられるんじゃないだろうか』という期待を抱いたのだ。
すべては無自覚。
ハルス自身、今、戦いの中で、『自分はただ、このバカの言動全部にイラついたから暴力をふるっているだけ』と認識している。
だが、その深層では、無自覚に『この男の高みを知りたい』『もし俺と同等か、それ以上の力を持つのであれば、できるかもしれない』『俺とこいつで……この世界のゴミみたいな胸糞を殲滅できるかもしれない』
……なんて、そんなことを、無自覚に……考えて……
「はぁ……はぁ……177番……」
「なんすか?」
ハルスの攻撃をすべて、汗一つかかず、紙一重で回避したセンに、
ハルスは、
「俺は、ちょっとした呪いで、俺に対して害意を持つ者以外に対して、あまり攻撃できないって状態にあるんだが……お前さ……もしかして、俺に、悪意とか殺意とか抱いてる?」
「ああ、抱いているよ」
「……ちなみに、なんでだ? 恨まれる理由はないと思うが」
「恨んでいるわけじゃねぇよ……俺のお前に対する不満は、たぶん、お前が俺に感じているソレと同じだよ」
「……」
「じゃあな、ハルス・レイアード・セファイルメトス」
「?!」
目を見開いたハルスを残して、
センは、そのままホールを後にした。
残されたハルスは、一度、天を仰いで、
「気に入らない野郎だ……初めて会った時からずっと、一秒たりとも、不快じゃなかった瞬間がねぇ」




