38話 暇つぶしに決闘しようぜ。
38話 暇つぶしに決闘しようぜ。
「これは、もはやキモいと断ずるにいささかの躊躇も必要とせんやろう」
呆れ交じりにそうつぶやく。
ゼンとずっと行動を共にしているせいで、多少、ファントムトークが伝染している模様。
ちなみに、セイラは、ずっと、ハルスの後ろで黙って様子をうかがっていた。
このイカれた状況でも特に何も言うことはないようで、黙ってボーっとしている。
そこで、試験官ミハルドが、
「……5次試験は明日の朝行う。集合場所は、変わらずここだ」
力なく、しんどそうにそう言ってから、
ミハルドは頭を抱えて、この場をあとにした。
その背中を一瞥してから、センは、
「じゃあな、金魚の糞ども。今夜は俺に感謝しながら眠るように。もし、どうしても俺に、試験クリアの礼がしたいというのであれば、今夜、女性陣だけ、俺の宿屋にくるように。一晩中、奉仕させてやろう、ひゃひゃひゃ」
と、何の意味もないセクハラ悪役ムーブをかまして、その場を去ろうとした。
が、そこで、ハルスが、
「おい、そこのバカ」
「おい、どこかに潜んでいるバカ、今すぐ出てきた方がいいぞ。170番様がお呼びだ」
「てめぇだ、カス」
ダルそうにそう言ってから、
「明日の試験までヒマだろ? ちょっと決闘しようぜ」
そう言いながら、剣を抜くハルス。
センは、そんなハルスに視線を向けて、
「決闘ってのは、ヒマつぶしにやることじゃねぇって、昔のエロい人が言ってたって、バッチャの親戚の友達のイトコが言ってた」
「うるせぇよ、人様のメンツをつぶしておいて、ただで帰れると思うな」
言葉と同時に、ハルスは踏み込んだ。
問答無用の斬撃が、一直線に振り下ろされる。
素晴らしい太刀筋。
無駄がなく、鋭く、洗練されている。
スーバンを遥かに超えている。
さすがは、『世界最強の天才』の称号を持つ勇者。
だが、センは、
「3次、4次と、何もしていなくて体力が有り余っているのは分かるが……俺は死ぬほど苦労して試験合格に勤しんだから、非常にお疲れなんだ。遊びに付き合う気はねぇ」
そう言いながら、身体を流すように動かし、ヒラヒラと剣閃を回避する。
紙一重の距離で、刃が空を切った。
ハルスは、こめかみに怒りを滲ませながら、声を荒げる。
「たまたま発見できたターゲットを殺し、どっかの店でステーキ食べただけだろ! てめぇも体力は有り余っているはずだ!」
ヒュンヒュンと高速で剣を振り回す。
連続する斬撃が、逃げ場を塞ぐ。
その全てを、センは鮮やかに回避した。




