32話 見誤っていた。
32話 見誤っていた。
――自分はここで死ぬと強く理解できた。
その結果、店主は、
「いや……だ……死にたくない……いやだぁ……」
子供のように涙を流す。
普段、どれだけ威勢のいいことを口にしているオッサンでも、
『ガチの恐怖』を前にすれば、幼子のように泣きじゃくる。
それが人間。
か弱い生き物。
と、そこで、背後から、
「治……癒……ランク……5」
そんな声がした。
センと店主は、そろって、その声の方に視線を向ける。
さきほど、ざっくり袈裟斬りをぶちかまされたスーバンが、
青ざめた顔で立ち上がり、震えながら、傷口に治癒魔法をあてていた。
血色悪く、息も絶え絶えだが、その瞳には、確かな『勇気』と『覚悟』が宿っているように見えた。
「見誤って……いたのは……俺の方……だった……認めよう」
そう言いながら、スーバンは、死期を飲み込んだ決意と共に、
ゆっくりとセンの元へと近づいて、
「お前は強い……そして、異常な狂気を孕んでいる……」
「いい評価をくれるじゃねぇか。期末テストで98点を取った時ぐらい嬉しいぜ」
「不合格だ」
「あん?」
「やはり……貴様は不合格だ。俺の判定は間違っていなかった」
「1秒前に『見誤っていた』と反省したばかりなのに、何言ってんだ」
「お前の『強さ』は見誤った……しかし、『判定』は間違っていない。貴様のようなイカれた男に『冒険者としての資格』を与えるべきではない。俺は……冒険者試験の試験官として、必ず貴様をここで殺す」
そう言いながら、スーバンは剣を構える。
「死ね……」
絶対的な殺気と極端な勇気と研ぎ澄まされた使命感。
その全てをかき集めて、
スーバンはセンの首を落とそうと斬りかかった。
スーバンの回復魔法では、傷を完全に癒せてはいない。
ズキズキ、ドクドク、グジグジと、体は痛む。
センに対する恐怖心もある。
しかし、それでも、スーバンは、誇りにかけて、センを殺そうと、
「ぅああああああああああ!!」
全身全霊の攻撃。
命を賭した、その一撃を、センは、
「……っ」
微動だにせず、受け止めた。
ザクゥ!!
と、センの首が綺麗に切断されて宙を舞う。
首だけになったセンは、
切り離された自分の体と、残身状態のスーバンを交互にチラ見してから、
「くく……やるじゃねぇか。いいだろう。合格だ」
と、受験生の立場でありながら、試験官に対して、合否を告げていくストロングスタイル。
センは今、まぎれもなく、首を斬り飛ばされているわけだが……
しかし、『そんなことは些細な事』とでも言いたげな顔で、まっすぐにスーバンを見据える。




