31話 この世界で最も尊き神に暴力をふるった罪と罰。
31話 この世界で最も尊き神に暴力をふるった罪と罰。
店主は必死に言葉を重ねた。
喉が潰れそうになるほどの声量で、センの合格を祝福する。
そこには誇りも体裁もなく、『生き延びたい』という一心だけが刻まれている。
「俺の合格を、そんなに喜んでくれる人がいるとは。こんなに嬉しいことはない」
とニコやかにそう言ってから、
センは、ニタリと悪魔のような笑みを浮かべ、
「俺の合格を盛大に喜んでくれた君には、記念の聖痕を授けよう。泣いて喜ぶがいい」
「せい……こん?」
「胸部に、直径50センチほどの風穴を開けてやろうと言っているんだ。俺ほどの神から直接与えられた聖痕ともなれば、他の信者たちに、それはもうでっかい自慢ができるぞぉ。やったね、店主ちゃん、誇りが増えるよっ」
「や……やめ……」
店主はバカじゃないので、胸部にデカい穴をあけられたら死ぬことぐらいは理解している。
だから、腰を抜かしつつも、あわあわ、必死に這いずるように、センから逃げようとする。
……が、ここは限定空間の中。
当然、逃げ場はどこにもない。
袋のネズミに憐れみを抱かせるほどの閉塞状態。
「はっはっは、どこへ行こうというのかね」
センは、どこぞの特務青二才が如く、ゆっくりと店主の元に近づき、
「た、たすけ……たすけっ……ぎゃっ」
必死に這いずっている店主の背中を踏みつける。
そして、
「よくも、この俺を殴ってくれたな。この世界で最も尊き俺様に暴力をふるった罪……その命で償ってもらおう」
「お、俺は何もしてないだろう! あんたを殴ったのはスーバン殿だ!」
「あれ、そうだったっけ? ま、どっちでもいいや。俺は他人を痛めつけることができたらそれでいい」
「さ、サイコ野郎め! くそ! 誰か! 誰か、助けてくれぇえええ!」
腹の底から救援を求める店主。
ここが限定空間で、叫んでも意味がないことは分かっているが、どうしても叫ばずにはいられなかった。
それもまた、一つの人間の弱さ。
あわれな店主を見下ろして、センは、
「助けを呼べばヒーローがきてくれるとでも? お花畑だねぇ。俺が現実を教えてやろう。この世にヒーローなんて存在しない。俺はそのことを、この世の誰よりも知っている」
冷たく、刺すような言葉。
心の底の深部の最奥から深淵を覗きこんでいるような言葉……と言ってもよかった。
あまりにも深く強い言葉を受けて、
店主は、自分の死を明確に受け止めざるをえなかった。
――自分はここで、このサイコに殺される。
その理解が前頭前野を連打する。




