30話 センめ……首だけで動きよった……
30話 センめ……首だけで動きよった……
逆に背後を取られたスーバンは、反射的に振り返ろうとして――その瞬間、
「ひゃっはあ! 汚物は消毒だぁあ!」
叫びと同時に、キノキの棒が振るわれる。
鋭く、無駄のない袈裟斬り。
右肩から左腰へ、ズバッと上半身が切り裂かれたスーバン。
キノキの棒は、その名の通り、『ただの棒(内包されている神気どうこうを無視した場合)』だが、センの研ぎ澄まされたオーラによってコーティングされたことで、現状、えげつない鋭利さと殺傷力を発揮している。
「ば……かな……」
切り裂かれたスーバンはゴフッと血を吐き出し、
そのまま力なく、その場に崩れ落ちた。
真っ二つになっているわけではないが、とんでもなく深い切り傷から、大量の血が溢れている。
『まな板の上で死にかけている魚』みたいにピクピクしているスーバンの憐れなザマを見て、店主は息を呑んだ。
信じられないものを見る目で、倒れた試験官とセンを交互に見やる。
「ひ、ひぃいい! ま、まさか! スーバン殿が?!」
店主は悲鳴に近い声を上げた。
彼は、民間人の中ではかなり胆力のある男であり、普段なら多少のトラブルでは動じない。
だが、目の前で起きた光景が異常過ぎて、その自負は簡単に砕け散った。
実際、この狂った状況で冷静さを保つのは難しいだろう。
センは倒れたスーバンから視線を外し、ゆっくりとキノキの棒を持ち上げた。
棒にはまだ温かい血がべっとりと付着している。
センはその表面を、ラリったような歪んだ表情で、べろりと舐めた。
「さあ、次はてめぇの番だ。……てめぇを殺せば合格できるとガイアが喚いている」
「や、や、やめてくれ! 龍紋は渡す!! ぉ、俺はサポーターを任されただけで、命を張る義理なんかない!!」
店主は半ば叫ぶように言いながら、慌ててアイテムボックスに手を突っ込んだ。
次の瞬間、『水戸黄門の紋所』を思わせる意匠のアイテムを取り出し、
それを、ほとんど投げ捨てるようにしてセンへ放った。
センはそれを難なく受け取った。
手のひらで転がし、表面の刻印や構造を一瞥する。
「これが龍紋か……『探索系の魔法を阻害する細工』が施されているが、それ以外は特に変わったところはない小物インテリアだな」
淡々とした評価。
実際、龍紋は大したアイテムではない。
センが保有している山ほどの神器と比べるとゴミ同然。
「それを会場まで持っていけばクリアだ! 俺を殺す必要は一切ない!! 合格おめでとう!!!!!」
恐ろしく険しい試練を乗り越え、ついにセンさん、4次試験合格です(*´▽`*)




