29話 ガイアのささやき方がハンパない。
29話 ガイアのささやき方がハンパない。
『かすることが出来たら合格にしてやろう』と、心の中で考えていたスーバン。
そんな彼に、センは、
「いやいや、そんなにハードルを下げなくていいよ」
そう言いながら、オーラと魔力を『キノキの棒』へ集めていく。
「あんたと、そっちの店主を惨殺できたら合格……ってことにしていいよ。そのぐらい高いハードルを越えてこそ、合格に箔がつくってもんだ」
軽やかで冗談めいたファントム。
しかし、言い切る調子が自然すぎて、どこまでが冗談なのか判別しづらい。
スーバンは、ギリっと奥歯をかみしめて、
「……ふざけるのも大概にしておけよ……」
明確な怒気が混じる。
上位者として、バカをたしなめる口調。
センは、
「一ミリもふざけてねぇよ。俺は俺に厳しいっていう、それだけの話さ」
そう言い終えるや否や、一気に踏み込んだ。
迷いのない加速。
常識の上限を求めるような速度で互いの距離を殺す。
次の瞬間、キノキの棒が全力で振り下ろされた。
スーバンは反射的に剣を掲げ、正面から受け止める。
金属と木が激突し、
ガギィッ、と火花が散った。
「むっ」
腕を貫いた衝撃は、完全に想定外の領域。
単なる棒きれの一撃……のはずが、そこには異様な重さと速度が満ちている。
予想を遥かに超えたセンのパワーとスピード。
スーバンは一瞬だけ体勢を崩す。
そのスキをセンは狙い撃ちするように、
「おらおらおら、死ね、ごらぁああ!!」
常軌を逸した殺気。
血走ったその目は、冗談や演技の域を完全に越えている。
つい先ほどまで、センの発言を『タチの悪いジョーク』と判断していたスーバンだったが、
センの『狂気を宿した眼光』を見て、考えを改めざるを得なかった。
「おい、貴様……まさか、本気で俺と店主を殺そうとしているのか?!」
「ああ! だってそうじゃなきゃ合格できねぇってガイアがささやくからなぁああ!」
正気を疑う目で、正気を疑う言葉を叫び続けるセン。
「ぐっ……」
スーバンの腕がしびれ始める。
圧倒的な力に、じわじわと押し込まれていく。
「バカがぁああ! もういい! 貴様のようなキチ〇イは死ねぇええ!」
試験官としての仮面を投げ捨て、
全身全霊、『テロリストを射殺するFBI』のような純度の高い殺意で、
スーバンはセンを完全に仕留めにかかった。
目を見張る速度で背後へ回り込み、
そのまま剣を振り抜き、センの首を刎ね飛ばそうとした――が、
「もちろん残像だ」
剣が切り裂いたのは、たゆたう残影のみ。




