28話 追試。
28話 追試。
シグナルズはフーマーが誇る精鋭部隊……つまりは、この世界で最高クラスの実力を持つエリート中のエリートということ。
センは、
「ガイアが俺に『シグナルズがナンボのもんじゃい』とささやいている」
などと病的な発言で切り返しつつ、
右腕を天高く掲げ、
そして――
パチン。
乾いた音が響いた瞬間、世界が反転した。
現世から切り出された特殊空間。
装飾のない純白だけが広がる空間に、センとスーバンと店主、そして不可視化状態の蝉原だけが閉じ込められる。
外界の気配は完全に断たれていた。
逃げ場も、干渉者も存在しない。
スーバンは即座に周囲へ意識を巡らせた。
その反応は極めて速い。
「……限定空間か。ずいぶんと高度な魔法を使うじゃないか。伊達や酔狂で冒険者試験の4次試験まで進んだわけではないということか」
感心と警戒が混じった声音。
空間魔法はかなりレアで、使い手の数は少ないが、
スーバンぐらいの手練れともなれば、
これまでの人生で何度か経験しているので、
無様に驚いたりはしない。
落ち着いた態度のスーバンとは対照的に、
店主は目を見開き、足元を確かめるように一歩引きながら、
少々戸惑った声で、
「な、なんで、空間魔法が……ウチの店にはガーゴイル・サービスの次元ロックがかかっているのに……」
その声に、スーバンがコキッと指の関節を鳴らす。
音は小さいが、切り替えの合図だった。
「次元ロックにも種類がある。この店が……というか、委員会が契約しているのは『転移を阻止する』というロックだけ」
そう言ってから、アイテムボックスに手を伸ばす。
スーバンは、鋼の剣を取り出すと、
余計な力を入れず、自然体のまま構えた。
切っ先をセンに向けて、
「なかなか高度な魔法の行使、そして、シグナルズのメンバーである俺を前にしても揺るぎない闘志……その二つに免じて、もう一度だけ試してやろう。俺に一撃でも入れることができたら……4次試験合格にしてやる」
スーバンは世界最高峰のエリート部隊――シグナルズの一員として、
これまで数多の厳しい訓練と実戦任務と死線をくぐり抜けてきた。
暗殺、制圧、護衛、掃討。
その経験が、自身の敏捷性に対する絶対的な自信を支えている。
本気で動いたとき、受験生程度の攻撃が自分に触れることはないと確信している。
だから、一撃を入れることなど実質的には不可能だと認識している。
ゆえに、本当の合格基準は別にある。
もし、かすることが出来たら特別に合格ということにしてやろう……と、心の中で考えていた。




