25話 常に泥酔している閃光。
25話 常に泥酔している閃光。
「酒代が足りねぇんだ。貸してくれ」
男の声は低く、ねっとりと絡みつくようだった。
頼み口ではあるが、そこに遠慮や躊躇は一切ない。
『断る』という選択肢が存在しないことを、空気そのもので示している。
この場で逆らえばどうなるか――その結果だけを、無言の圧として突きつけてくる。
動きに無駄はなく、距離の詰め方も自然だった。
周囲の客の視線を遮る位置取り。
店主が奥へ消えた、絶妙なタイミング。
日常的に繰り返してきた所作だと、一目で分かる。
実に綺麗なカツアゲだった。
センは、目の前の男をじっと見つめた。
怒りも恐怖も、表情には浮かばない。
ただ、値踏みするような視線だけが、相手の全身をなぞる。
「……『実質存在値』たったの5京か……ゴミめ」
「ああ?」
チンピラの眉がぴくりと動く。
意味は勿論理解していないが、『侮辱されたこと』だけは理解した反応だった。
センは続けて、
「9に変身できるようになって目が肥えた結果、『禁獣化した際の存在値』が見えるようになってな。精神年齢は中学二年生のまま一切変わっていない俺だが、出来る事はどんどん増えている。そこに痺れる、憧れる」
自嘲と皮肉を混ぜた語り口。
「なにいってんだ。てめぇも酔ってんのか?」
チンピラの声に苛立ちが混じる。
イカれたキチ〇イに対する嫌悪と警戒。
センは、あえてニコリとサイコな笑みを浮かべ、
「現実には常に泥酔しているさ。そうじゃなきゃ、こんなバグった世界で呑気に生きてられねぇよ」
その態度が、さらに男の神経を逆撫でする。
「腹立つ野郎だ……なにもかも」
吐き捨てるように言いながら、チンピラは一気に距離を詰めた。
次の瞬間、荒れた手がセンの胸倉を掴む。
明確な威圧を受けてなお、センの余裕は崩れない。
「KOOLになれよ。まだ慌てるような時間じゃない」
「おい、ごらぁ……あんまり調子に乗っていると殺すぞ」
低く、はっきりとした殺意。
脅しではなく、実行を前提にした言葉だった。
そこで、センの表情が変わる。
「殺す……? おいおい、一線を超えたな」
目の奥に、はっきりとした怒りが灯った。
「いいか、チンピラ。おれは酒や食い物を頭からぶっかけられようが、カツアゲされようが、母親の形見の財布を踏みつけられようが、友達を傷つけられようが、世界を壊されようが、たいていの事は笑って見過ごしてやる。だがな!!! どんな理由があろうと!! 俺は俺を殺そうとする奴は許さな――ぐがぁあ!」
テンプレを叫んでいる途中で、センはチンピラに思いっきり殴られた。




