23話 蝉原のアニキが優秀すぎて、センはついていくだけでいい。
23話 蝉原のアニキが優秀すぎて、センはついていくだけでいい。
センはテキトーな言葉で一度遊んでから、
そのまま、話題を核心へ滑らせた。
「で、龍紋とやらはどこにある?」
「どこにあると思う?」
「……」
蝉原のダル絡みに対し、センは、自分の悪行を棚に置いたジト目を向ける。
その視線を受けて、蝉原は、
「くく」
と、一度楽しそうに笑ってから、
「龍紋はセファイルの酒場の店主がもっているよ」
「……さすが、未来を知る男。ありがたいねぇ」
軽やかに礼を口にしながら、
しんなりと魔力を高めていく。
「転移ランク20000」
言葉が終わると同時に、足裏の感覚がふっと抜ける。
身体を支えていた重さが、一瞬だけ曖昧になる。
周囲の壁も灯りも、形を保ったまま遠のいていった。
空気が一枚剥がれ落ちるような感触。
音が途切れ、温度が反転するような無音の間が訪れる。
そして、視界が切り替わった。
★
――セファイルは、どこにでもありそうな中流の城下町。
街並みは最低限整っているが、華やかさはない。
国としての格が低いため、往来の人影もまばらで、喧騒とは程遠い。
商人の呼び声も控えめで、空気は落ち着いている。
センと蝉原は、目的の酒場のすぐ横にある路地へと転移していた。
狭い石畳の路地に、酒と生活の匂いが混じって漂っている。
路地から表へ出る二人。
閑散とした人通りで、城下町らしい整った景観が続いていた。
目的の場所は『ソウカ』という名の大衆酒場。
大衆酒場と呼ぶにはかなり立派な造りで、安っぽさはなく、外観からしてどこか気品を感じさせる。
センは、不可視化状態の蝉原を伴ったまま、自然な足取りで店内へ入った。
誰かと連れ立っているような素振りは一切見せない。
中は想像以上に広く、客の話し声と食器の触れ合う音が低く響いている。
その奥から、ガタイのいい店主が視線を上げ、迷いなくセンを迎え入れた。
センが席に着くと同時に、店主が声をかける。
「ご注文は?」
「ステーキ定食」
短いやり取り。
それはただの注文ではなかった。
決められた言葉が発せられた瞬間、店主の耳がわずかに動く。
視線が鋭くなり、まっすぐにセンを捉えたまま、
「……焼き加減は?」
「弱火でじっくり」
二つ目の合言葉。
その返答に一切の淀みはない。
符号が完璧に噛み合ったことで、店主の表情が明確に変わる。
周囲に客がいるにもかかわらず、声は自然と低くなった。
「……ずいぶん早いな。なんでこんなはやくココに辿り着いた? そんなに簡単にとける暗号ではなかったはず……というか、俺が任されたのは4次試験のサポーターだぞ……今はまだ3次試験中のはずだが……」




