22話 いでよ、セミハロン。
22話 いでよ、セミハロン。
センは言葉を区切りながら、自分の推測を整理する。
龍紋という名称だけでは、形状や規模は判断できない。
龍のように巨大な紋章である可能性も、
逆に、持ち運べるほど小さな印や刻印である可能性も否定はできない。
「生きている犯罪者なら、時間経過と共に、色々と痕跡を残してくれるでしょうけど……アイテムとなると色々面倒。どういうものかすら分からないモノを北大陸のどこかから見つけ出す……こいつは大変な試験だ」
そう言いながら、センは無意識に頬をぽりぽりとかいた。
冗談めいた口調とは裏腹に、その分析は冷静で現実的。
(だいぶえぐい内容の試験だな……俺なら余裕だが、これ、普通の受験生はクリアできるのか?)
心の中で、率直な感想が浮かぶ。
視線を戻し、センは改めてミハルドに問いかける。
「ちなみに、ヒントとかあります?」
「一切ない」
言葉の温度は変わらない。
感情を挟む余地のない、明確な拒否だった。
「ゼロっすか……ちなみに、タイムリミットは?」
「二週間」
「……なげぇ」
思わず漏れた一言。
短期決戦ではなく、『徹底した探索を前提にした試験』であることがはっきりする。
つまり、それだけ見つけにくい代物だということ。
「……まあいいや、了解っす。うっす」
それ以上の質問はせず、センは軽くアクビをしながら返事をする。
ぽりぽりと頬をかきながら、心の中で、
(ヒントゼロかつ二週間ぐらいはかかる難易度……か。ガチで取り組もうとしたらだいぶきつい試験だな。『適性存在値だった頃』の俺だと、ここで終わっていたかもなぁ)
冒険者試験における適性存在値は、おおよそ30~50。
対して、今のセンの存在値は380京以上。
今のセンにとっては手間すらかからない単純作業だが、
『転生初期のセン』だと、突破できたかどうかは正直怪しいところ。
センは強いし、根性もあるが、
頭は決して良くないし、IQも平均前後。
ゆえに、ちゃんと頭を使わないといけないテスト関連は普通に苦手としている。
「じゃ、いってきまぁす……」
気の抜けた調子でそう言い、センは軽く背伸びをした。
そして踵を返し、半円形ホールを後にする。
★
――廊下に出たところで、隣を歩いていた蝉原へ、唐突に声を張った。
「いでよ、セミハロン。そして、願いを叶えたまえ」
すでに真横にいる相手に向かっての、意味のない召喚命令。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃん」
蝉原は一拍も置かず、流れるままに返した。
あまりにも自然で、あまりにも風雅な意趣返し。
「セミハロン。一つ目の願いだ。どうか、蝉原勇吾を全世界の王にしてくれ。そして二つ目の願いで、龍紋の場所を教えてくれ」
「二つ目はともかく、一つ目の願いは私の力を大きく超えている」
「そうでもねぇと思うけどなぁ」




