19話 三次試験の攻略には、最低でも2~3日はかかるだろうなぁ。
19話 三次試験の攻略には、最低でも2~3日はかかるだろうなぁ。
センは短く息を吐き、指先を軽く動かす。
魔力が走り、三つの死体が同時に宙へと浮かび上がった。
重量感はそのままに、しかし微塵の揺らぎもなく、安定した状態で空中に固定される。
その様子を横目で見ながら、蝉原は特に感想を述べることもなく、ただ穏やかに微笑みながら、軽い不可視化の魔法を自身にかける。
センの目をごまかすことはできないが、そこらの人間の目では絶対に看破できないレベルの不可視化。
次の瞬間、センは転移魔法を発動させる。
視界が歪み、空間そのものが折り畳まれるような感覚が走る。
浮遊した死体と、センと蝉原の身体が、まとめて別の座標へと引き寄せられた。
★
――転移先は、ダンジョンの外。
三次試験の試験官が待機している試験会場だった。
半円形の広いホール。
一次試験でも使用された、見覚えのある場所。
石造りの床と壁は隅々まで清掃されており、無機質でありながら厳かな空気が漂っている。
その中央付近で、ひとりの男がのんびりと食事を取っていた。
冒険者委員会の責任者という雑務を押し付けられている、第九使徒ミハルド。
温厚そうな顔立ちだが、長年の雑務で疲労がにじんでいる。
簡素な食事を、急ぐ様子もなく口に運んでいた。
――ミハルドは、三次試験の『難易度』をよく理解していた。
このレベルの試験内容であれば、討伐完了までに数日かかるのが普通。
だからこそ、彼はこうして気長に待っていた。
その空気を切り裂くように、突如として空間が歪む。
転移の光が収束し、センと蝉原(不可視化状態)、そして宙に浮いた三つの死体が出現した。
「むっ」
ミハルドは一瞬だけ驚いたものの、すぐに冷静さを取り戻す。
転移を可能にする魔法やアイテムはレアだが、『冒険者試験の3次試験まで残る者』であれば、保有していたとしても、そこまで驚くほどのことじゃない。
加えて、現れた男の顔に見覚えがあったため、過剰に警戒することはなかった。
「なんだ、177番。転移などしてきて……まさか、まだ質問があるの……か……」
そこまで言いかけて、ミハルドは言葉を失った。
視線が、空中に浮かぶ三つの死体へと釘付けになる。
「……ん? ま、まさか……も、もう討伐してきたというのか……そ、そんなバカな……ありえない。だって……まだ、数時間程度しか……」
銀のフォークをテーブルに置き、慌てて立ち上がる。
その表情は、信じがたいものを前にした人間のそれだった。




