10話 ぶっ壊れて、歪んで、腐って、それでもなくさなかった全て。
本日の3話目です!
10話 ぶっ壊れて、歪んで、腐って、それでもなくさなかった全て。
異空間に漂う光が、わずかに揺らいだ。
無数のモニターが重なり合うように配置されたその中心で、蝉原はゆっくりと息を吐く。
「さて……それじゃあ、そろそろセンくんを原初の世界に戻そうかな……」
その言葉に、ネブミの肩がわずかに跳ねた。
軽口のように聞こえるが、ここから先は引き返せない段階だということを、彼も理解している。
「……蝉原……最後に一つだけ確認させてくれ」
ネブミの声は低く、慎重だった。
冗談を挟む余裕は、もうない。
「なにかな?」
蝉原は視線をモニターから外さず、穏やかに応じた。
「勝てる……と思うか? センエースに」
一瞬、異空間の静寂が深まる。
ネブミの問いは、感情ではなく、現実に根差した疑念。
「できるかどうかはどうでもいいよ。やるんだ」
即答だった。
迷いも逡巡もなく、事実を述べるかのように言い切る。
「……前から言いたかったんだが……センエースのモノマネをし続けても、センエースにはなれないぞ」
ネブミの言葉には、忠告と諦念が混じっていた。
長く、近くで見てきたからこそ、出てくる言葉。
「センエースのモノマネ? 『できるかどうかはどうでもいい。やるんだ』ぐらいの言葉は、そこらの啓発書にいくらでも書いてあるよ」
蝉原は軽く肩をすくめた。
その態度は、あくまで飄々としている。
「……」
ネブミは何も言い返さなかった。
言葉を重ねても、ここでは意味がないと悟ったのだろう。
蝉原は、あえて仰々しく右手を上げて、
「レディパーフェクトリィ……準備は完璧に整った」
その一言とともに、モニター群の明滅が一段強まった。
数え切れない情報が、蝉原の背後で静かに同期していく。
そこで蝉原は、モニターの中に映るセンの姿を、じっと見つめた。
その視線には、敵意と敬意が、歪んだ形で混ざり合っている。
「さあ、はじめようか、センくん。全ての生命に祝福されし無上の王よ。……みんな、どうせ、君が勝つと思っている。だからこそ勝機が産まれる。ぶっ壊れて、歪んで、腐って、それでもなくさなかった全てを集めて……最後の最後まで君にあらがうと誓う」
その言葉は、宣戦布告であり、同時に賛歌でもある。
覚悟を叫ぶ蝉原に、ネブミは、
「それも、啓発書に書いてあったのか?」
重たい皮肉を込めて言った。
「いや、今のはセンくんのモノマネだよ」
あまりにも自然で、あまりにも歪んだ答え。
それでいい。
それがいい。
「……」
ネブミは渋い顔をしたまま、何も言えずに口を閉ざした。




