7話 センテラスは……
7話 センテラスは……
異空間の空気は、相変わらず乾いていた。
無数のモニターが淡く明滅し、光の粒子が蝉原とネブミの影を不規則に歪ませている。
蝉原はその中心で指を組み、いつも通り余裕に満ちた微笑を浮かべていた。
「蝉原優雅も撒き餌だね。アレは美少女だし、センくんはなんだかんだ女に甘い。狡猾な俺の言葉より、『利用されているだけのユウガ』や『何も知らない俺』の方が、よほど強力なカードになる」
あまりにも軽い調子で語られるその言葉に、ネブミは思わず顔を引きつらせた。
「……自分のTSを美少女と呼ぶ胆力……」
呆れと嫌悪が混じった声音だった。
蝉原は肩をすくめるだけで、気にした様子も見せない。
「ついでだから、『センテラス』に関しても正しく理解しておいてもらおうか。彼女は単なるTSセンエースじゃない。彼女こそが本当のセンエースだ」
ネブミは一瞬、言葉を失った。
理解が追いつかず、反射的に問い返す。
「えっと……どういうこと?」
「センテラスはセンエースのTSじゃない。センエースが、センテラスのTSなんだ」
断定的な言い回しだった。
ネブミは眉をひそめ、苛立ちを隠さず吐き捨てる。
「それはどういう言葉遊びだ?」
「ある意味で、もっとも皮肉な言葉遊びだけれど……突き詰めると、いや、表返すと、結局のところは、ただのシンプルな事実」
蝉原の声には、一切の迷いがなかった。
理屈ではなく、確信として語っている。
ネブミは頭をガシガシとかきむしり、渋い顔のまま考えを整理しようとする。
「……えっと、今の話は……『仮に、この世界が物語なら、センテラスが主人公で、センエースはTSとして登場するサブキャラにすぎない』って認識であってる?」
「間違ってはいないね。……まあ、でも、正直、その辺はどうでもいいんだ。所詮は『視点の位置』の違いでしかないから」
本当に心底どうでもよさそうに、蝉原はニコニコと微笑んだ。
価値判断そのものを放棄したような態度だった。
「センテラスはコスモゾーンの太陽になれる存在……つまりは、世界に咲き誇るメイン主人公。……だから、100回転生するのも、究極超邪神を倒すのも、『ゴートとしてラムドと合体する』のも、本来はセンテラスの役目だった」
ネブミは低く唸る。
「本来はセンテラスの物語……そのバグというか、異質な二次創作・バグ派生として、TSした男版『センエース』のサブストーリーが存在し……そのサブ軸の中でもがいているのが俺たちだってこと?」




