5話 純粋蝉原。
5話 純粋蝉原。
蝉原の膨大すぎる発言に、ネブミは一度眉間にしわを寄せて、
「ま、目指すのは勝手だが……いけるもんなのか? 深層一層のマイナスエネルギーを全部集めても2700京が限界なんだろ? オリジンと破壊衝動がナンボのもんか知らんけど……」
と不安視しているネブミに、蝉原は、淡々と、
「数字を盛るだけなら簡単だよ。それが破壊衝動ソルの強み。そして、戦闘力を分厚くするのも難しくない。そこがオリジンの強み。『膨大な力を得る』という点だけで見れば、常に、アドバンテージはこちら側にある」
「普通に考えれば、こっちの方が有利なのに、俯瞰でみると勝ち目がゼロに思える……異常な状況だぜ。状況っつぅか、センエースという一個人がエグすぎる……マジでキモすぎる……」
「1垓に届くだけなら難しくない。戦闘力を盛るのも。……それにプラスして、『センテラス』を上手く使うことができれば……実際のところ勝てる可能性はゼロじゃない」
その名を聞いた瞬間、
ネブミの顔が露骨に歪む。
「……センテラス……センエースのTSか……気色悪い存在だぜ。嫌いな同級生のTSとか……集合体恐怖症にとってのハチの巣みたいなもんだ」
「極端な比喩だね。俺はかわいらしいと思うけどなぁ。なんだったら世界一かわいいとすら思う。……俺は、女なんて全部同じだと思っているけれど、センテラスだけは別だと認識しているよ。彼女とだったら結婚してもいいね」
「……きもいきもいきもい」
吐き気を堪えるようにつぶやき、ネブミは視線を戻した。
話題を変えなければ、精神的に持たないと判断したのだろう。
「ああ、そうだ……一つ確認しておきたいんだが、『ラストが出現した』のもお前の計画だったのか?」
「そうだよ」
「ラストに襲われた時、お前、本気で慌てていなかったか?」
「それは『純粋蝉原』の方だね。彼は『無知であること・愚かであること』が最大の仕事だから」
「……純粋蝉原?」
聞き慣れない単語に、ネブミは眉をひそめる。
蝉原は、その反応を楽しむかのように、
わずかに口角を上げた。
「これから先、君にも色々と動いてもらうことになるだろうから、伝えておこうか。その方が、色々とスムーズにいきそうだ」
「どういう意味?」
「簡単に言えばソルのモノマネをした」
蝉原の最後の言葉が落ちると、異空間の静寂が一段深くなった。
モニター群が発する淡い光だけが、二人の輪郭をなぞる。
ネブミは椅子に深く沈みながらも、目だけは蝉原を追っていた。
「俺は、ソルにならって『自分を複数に分割する』という手法をとった。それこそがオペレーション・ロキの中軸」




