3話 ある意味で、理想的なバティ。
3話 ある意味で、理想的なバティ。
ねぎらいの言葉を受け、ネブミは、短く息を吐き、肩の力を抜く。
「本当に疲れた」
肩をすくめる。
愚痴とも本音ともつかない一言だった。
一仕事終えた身体をほぐすように、ゴキゴキと首と肩を鳴らした。
ネブミは、自分が大事にされていないことは理解している。
しかし、蝉原に愛されても気色悪いだけなので、今ぐらいの距離感が一番いいと思っている。
なんだかんだ、この二人は『上下関係のあるバディ』としていい感じに成立している。
ネブミは、あくびまじりに、
「……『プライド』は回収しきれなかったが、文句は言うなよ。薬宮トコと一緒に、センエースの中に根付いてしまったんだから。俺じゃあ、どうしようもない」
言い訳ではない。
事実の結果報告。
ネブミは極めて優秀なエージェントに成長したが、
それでも、出来ないことはある。
センエース関係がまさにそれ。
センエースだけは別格。
いつだって。
どんな時だって。
「いいよ、別に。カケラがあれば十分コンプボーナスは得られるからね」
即座に返される肯定。
そこには未練も不満も存在しない。
蝉原は、ネブミの限界を正しく理解している。
上司として非常に有能。
部下の力量を正しく理解し、限界まで働かせはするが、決して『できない事』を要求したりはしない。
「……ああ、そう」
軽く返事をしながら、ネブミは適当に見つけた椅子に腰を落とし、深く息を吐いた。
背もたれに体重を預ける。
身体の重さが、今になって押し寄せてきたかのようだった。
「ふぅ」
天井代わりの虚空を仰ぎながら、疲労を滲ませる。
しばらくの沈黙のあと、ふと現実的な疑問が口を突いて出た。
「つぅか、あれに勝てんのか? 想像していた以上に、究極超神化9のセンエースはハンパじゃないんだけど……正直、勝てるビジョンが一ミリも見えないんだが……」
蝉原は、その問いを待っていたかのように、
即座に反応する。
ニコニコしながらうなずいて、
「そうだね。流石、センくんと言ったところ。彼の強さは間違いなくナンバーワンだ」
賞賛の言葉に、皮肉は含まれていない。
蝉原はセンエースを殺すつもりでいる……が、センエースの一番のファンであるのも事実。
その倒錯し矛盾した変態的な蝉原の心境に対し、
ネブミは頭を掻きむしり、苛立ちを隠そうともせず、
「……究極超神化9になったあいつの存在値は『380京』程度。まだまだ開いたばかりだから適合しきれていなくて数字は大人しいもの。……それでも、2500京をワンパンできる。もはや数字は意味をもたない」




