157382話 絶対的な死。
157382話 絶対的な死。
場が静かになって、その場には、粒子状になっている無数の命のカケラと、
――剣翼から出てきた死者トコ。
センは、命のカケラを全て回収した上で、
「こいつらは……問題なく再生させることが出来そうだな……問題は……」
剣翼として支えてくれた死者トコに寄り添う。
センはそっと膝をつき、彼女の手を包み込むように握った。
その指先に残っているのは、かすかな温度だけで、わずかに触れただけで消えてしまいそうな脆さがチリつく。
顔の近くに手を添えると、温度はさらに薄く、指先の下で光の粒が静かに漏れ出ていくのが分かった。
「大丈夫か?」
「大丈夫やないなぁ……なんせ、死んどるからなぁ」
そろそろ消える時間が近い。
握り返してきた手が弱弱しい。
「マジで、だいぶイカつい状況だ……プライドの効果……プラスの意味で凄かった分、『お前を消す』というマイナスの勢いもハンパない」
世の中は対価交換が基本。
センは淡々とした口調のまま、崩れ落ちていく彼女の体を見つめる。
すさまじい恩恵を受ければ、その分だけの支払いを求められる。
今、トコが払わされている対価――それは紛れもなく存在の完全消失……『絶対的な死』だった。
「あたしのことは……もうええよ。十分すぎるぐらい、長生きしたし……夢も叶えたし、天命も果たした」
「天命?」
「あんたを守ること」
その言葉に、センの喉が小さく鳴った。
トコの手は、もう見えないぐらい薄くなっているが、
握り返す力には、まだギリギリ確かな質感があった。
「あたしの形見……『死ぬほど大事にせぇ』とは言わんけど、ちょっとぐらいは大事にしてや」
センはトコの目を見つめ、わずかに息を吐く。
トコの存在が薄れていくたび、周囲の光が彼女から零れ落ちるように散っていた。
指先に触れる彼女の肌は、温度のある部分と、霧のように消えかけている部分が混ざり合っていた。
「どうやら、プライドを使ったことで、お前の能力は完全に死んでいるっぽいな……」
「うん? ああ、そうやな……あたしの中にはもう『ミシャンドラ』は存在せん」
「ということは、もうリライト(タイムリープ)はできねぇわけだ」
ニっと笑うセン。
その表情は、どこか悪戯めいた光を宿していたが、目の奥は妙に静かだった。
狂気と悪意が絶妙なバランスで混ざり合う。
握ったトコの手に、センは少しだけ力を込める。
「ちょ……なにをする気――」
「たいしたことじゃねぇ。お前から借りていた命を返すだけだ」




