157376話 形見。
本日の2話目!
ここからこそ真の怒涛!
157376話 形見。
「ラースを奪い取ってメモリが増えた今なら……問題なく奪える」
そう言いながら、ラストは、オトリで表層に出していただけの闇川を飲み込んだ。
黒い影が一段と濃くなり、人の形をしていた部分が完全に溶けていく。
悲鳴さえも飲み込まれ、もはやそこに『闇川』という個は残っていない。
完全に主導権を奪い返すと、
グリードの力を使い、
薬宮トコごと『プライド』を奪い取ろうとする。
空間そのものが引き絞られたように歪み、トコの身体から何かがむしり取られていくのを、センは見た。
薬宮トコの全身が、掃除機で吸い込まれるみたいに、ラストに吸収される。
足元から順に、輪郭が崩れ、粒子になっていく。
その姿が、闇の渦に飲み込まれる寸前まで、彼女の笑みは崩れなかった。
「ははははははぁあああああ!!」
ラストの哄笑が、戦場を満たす。
トコごとプライドを奪ったことで、全ての大罪を集め終えた。
結果、爆裂に膨れあがっていくラスト。
黒い質量がさらに膨張し、大気が悲鳴を上げるように裂けていく。
その存在値――2000京。
数字としての実感が追い付かないほどの絶望的な差。
だが、それでもセンは視線を逸らさなかった。
「見なさい、センエース! たどり着いた命の果てを! 凡百の愚鈍な命が勘違いしてきた『虚無の頂点』ではない。本物の……最終到達点」
ラストの声には、狂喜と陶酔が混ざっていた。
自らを飾る称号に酔いしれ、世界の全てを見下ろしている。
「……このわずかな時間の中で、あまりに、色々と起こりすぎて……脳が追い付かねぇよ……」
センは、歓喜に震えている『究極完全大罪ラスト』を尻目に、
重く息を吐く。
怒りも悲しみも、まだ完全には形を取れていない。
ただ、頭の中だけが必死に回転し続けていた。
「……マジで……どうしたもんかな……薬宮を吸収したことで、お前、めっちゃ強くなってんじゃん……あれか? 大罪シリーズをコンプしたから、そのボーナスでも乗っている感じ? ふざけんなよ、畜生が……」
ぶつぶつと、文句を言いつつも、
その実、センの思考はトコたちを救い出す手段を探っていた。
ラストの力の質。
暴走の仕方。
いま見逃してはいけない違和感。
(まいったね……どうしたもんかなぁ……)
悩みながら、センは、何かしらヒントでもないかと、
トコからたくされた形見のノートを開いた。
そして、トコが何を書いたのかを確認する。
紙面に並んだ文字は乱れていない。
ぎりぎりまで追い詰められていたはずなのに、
そこには丁寧で、きっちりとした筆跡があった。




