157374話 あなたへの愛だけが、あたしのプライド。
本日の3話目です。
157374話 あなたへの愛だけが、あたしのプライド。
センの挙動は、緊張をほぐす儀式であり、自分を平常へ引き戻すためのリズムでもあった。
「で、トコさんよぉ……お前の言う、とっておきの切り札ってのはなんだ? 正直、この絶望を打破できる切り札なんざ存在しえねぇと思うんだが」
冗談めかした調子を保ちながらも、視線だけは真剣だった。
この戦いに挑む前、センは、トコから、
『この状況になっても勝てる切り札がある』と聞かされた。
そのときの彼女の笑みは、無謀とも自信ともつかない、奇妙な静けさをたたえていた。
その顔があまりに自信満々だったので、センは彼女の切り札とやらを無邪気に信じることにした。
「あたしの異能の中には、『プライド』っていう、すごい能力があるんや。その能力の効果は、『神がかった最高傑作』を描けるというもの! どうや、すごいやろ」
胸を張って言い切るトコ。
「……ちょっと何言ってるか分かんない」
センは眉をひそめる。
戦闘力としての数値や能力なら理解しやすい。
だが、『最高傑作を描く』という抽象的な表現は、彼の実戦脳にはどうにも落とし込みづらかった。
「素晴らしい小説が書けたところで……この状況をどうにかできるとは思えないんですが……」
「プライドを『プロット』と併用すると、あたしの『8時間』を最高傑作にすることができる」
そう言いながら、トコは事前に用意していたノートにさらさらと、ここから8時間の間に起こることを書いていく。
昔は数分が限界だったプロットも、今では大きく成長した。
紙の上をペン先が走る音が、遠雷のような魔力の轟きの中で、妙に生々しく響いた。
彼女の視線は一度も闇川を見ない。
ただ、未来だけを見ているように、白い紙面へと言葉を刻みつけていく。
その様を見ながら、センはボソっと、
「……ようは、未来の自分を強化するってことね。ちなみに、その代償は?」
「死ぬ」
返ってきた答えは、あまりにも短く、あまりにも軽かった。
冗談の余地もない一言に、センの喉がきゅっと鳴る。
「……ぁ?」
問い返す声は、無意識に漏れたものだった。
脳が情報を拒否しようとする一瞬、その隙を突かれて、現実が胸の奥深くに突き刺さる。
「よし、完成! これで、あたしは完璧なブースターになれる。セン、あたしを、あんたの剣翼に組み込むんや。そうすれば、あのカスをぶっ殺せるで!」
トコは勢いよくノートを閉じ、満足げに息を吐いた。
書き終えたページには、彼女の未来と、命の終わりまでの全てが詰め込まれている。
それを、まるでテストで満点を取った答案でも見せるみたいに誇らしげに掲げた。
クリスマスイブイベント、達成(*´▽`*)
事前告知していた「まとめ」は、たぶん、29日に投稿します( `ー´)ノ




