157363話 嘘つきピエロ。
157363話 嘘つきピエロ。
世界が、一瞬、真っ白になった。
轟音と衝撃波が、全方向へと爆ぜる。
破壊の奔流が、周囲の瓦礫と大地を巻き込み、粉塵と光の渦となって吹き荒れた。
「ふざけるな、センエース! 私は貴様に対して無敵のはず!! なのに、なぜ、私は、ダメージを受けている!!」
「ラストだけなら完璧に発動する『純度の高い無敵』も……グリードだのグラトニーだの、余計なゴミが山ほど入ったことで、かなり揺らいでいる」
「た、確かに無敵率は下がっているようだが……しかし、まだまだ貴様に対するダメージカット率はかなりの割合で働いている! それに、そもそも、私は、貴様より10倍ぐらい強いんだぞ!! なのに!!」
「たかが10倍の重力など、俺には何も感じない」
最後の一撃が炸裂した時、闇川は、恐怖にひきつっていた。
それまでずっと、『数値の暴力だけですべてを見下ろしていた怪物の瞳』が、『本物の恐怖』に濡れていた。
瞳孔が開き、わずかに震えた唇から、言葉にならない息が漏れる。
その身体を内側から破裂させるように、センの一撃が貫通し、肉体が砕け、骨が弾け飛び、黒い影の塊が音もなくほどけていく。
みっともなく……怯えきった顔で崩れ落ちるエンド。
霧散していく無様な闇。
センエースは――あざやかに、舞い散った。
――泥臭い死を積み重ねた果てに、センエースは、見事、この地獄の闘いに勝利してみせた。
ただし、代償は膨大。
拳が相手を穿った感触と同時、センの身体も限界を超えた。
無数の傷口から神気が噴き出し、骨と肉の溶ける音が体内から立て続けに響く。
足元の感覚が、ふっと消える。
重力に引かれて崩れ落ちるはずの身体が、しかし、そのまま細かい光の粒と血飛沫とに分かれて、空中に解き放たれていく。
砕けた肉体が、風に乗った花びらみたいに、戦場の上へ散りばめられる。
そこにあるはずの痛みも重さも、もう、セン自身には感じられない。
センだけじゃない。
誰も、もう……センエースを感じることはできない。
空に溶けていったセンを見つめながら、
トコは、ボソっと、
「は、はは……ほんまに勝ってもうた……」
ひきつった笑いが漏れる。
笑い声なのに、まるでしゃっくりみたいに途切れ途切れ。
「勝った……けど……死んでるやんけ……ボケェ」
足元には戦いの爪痕だけが残り、抉れた地面と黒く焼けたクレーターが広がっている。
耳に届くのは、自分の呼吸と心臓の音だけだった。
ドクン、ドクン、と胸の内側から鳴る音が、やけに大きい。




