157361話 ぐつぐつ……
157361話 ぐつぐつ……
空気は重く、湿った鉛のように肺の中へと沈んでいく。
息を吸うだけで胸が痛い。
ラストとの激しい戦いは、最初から最後まで、えげつない泥試合。
華麗さや優雅さなど、一片もない。
ただの醜い殺し合い。
殴って、壊して、踏みつぶして、まだ動くから、さらに叩き折る――そんな、底なしの地獄。
『センエース』と『パーフェクト闇川』の狂気的な殺し合いが、終わりのない悪夢みたいに延々と続く。
一撃ごとに地面がめくれ上がる。
砕けた地盤が岩の雨になって空へと飛び散る。
衝突のたびに鼓膜が破れそうな爆音が走り、
耳の奥に耳鳴りが焼き付いたまま離れない。
世界の色が、一瞬ずつ白く飛ぶ。
――センは宣言通り、『力を奪われたぐらい』では負けなかった。
腕を折られようが、肋骨を砕かれようが、内臓を潰されようが関係ない。
なんだったら、そこからの方が強かった。
欠けたぶんだけ無駄が削ぎ落とされ、
純粋な『殺意』だけが研ぎ澄まされていく。
圧倒的な数値差を前に、
意味不明な頑丈さを世界に魅せつけた。
闇川の攻撃は、理屈で言えば避けようのない、理不尽な殺意の塊……その連打。
なのに、センはその一つひとつを、紙一重でくぐり抜け続ける。
常識では説明できない踏み込みと、死線ぎりぎりをなぞる緊急回避。
刃の浅瀬を靴裏で踏みつけるような、
――そんなギリギリを延々と続ける。
拳と拳がぶつかるたび、骨がきしむ嫌な感触がセンの腕を伝い、筋肉が悲鳴を上げる。
視界の中で、闇川の輪郭が何度もぶれて消え、
気づけば背後に回られ、内臓をえぐるような打撃を叩き込まれる。
「いい動きだ! 感動的だな! だが無意味だ!」
HPが0になってもファントムトークを叫び続けるセンエース。
血が逆流するような痛みに膝が折れかけるたび、センは歯を食いしばり、己の頬を噛んで意識を無理やり現実へ引き戻した。
何度倒れかけても、そのたびに立ち上がり、
前へ、前へと食らいついていく。
口の中は鉄の味でいっぱい。
呼吸のたびに喉が焼ける。
視界の端が暗くなっても、センは瞬き一つでそれを振り払い、震える足を前に出す。
膝が笑っても、足首が悲鳴を上げても、全身の関節がバラバラになりそうでも、前進以外の選択肢を頭の中から叩き出していく。
トコを守るために、世界を守るために、
完璧なトゥルーエンドのために……命を燃やして戦い抜いた。
胸の奥で燃えているものは、『悪』や『正義』なんて綺麗なだけの言葉じゃない。
お行儀のいい概念は全部燃やして燃料にしている。
沸騰する……またたく……
ここから先の展開を読める読者様がいるだろうか!
否!!
いない!!




