157360話 未来を語るピエロ。
157360話 未来を語るピエロ。
言葉の端が震え、トコの声は掠れ、今にも溶けてしまいそう。
肩を縮め、必死に呼吸を整えようとするが、涙が次々にあふれて止まらない。
崩れ落ちそうな身体を支えるように、胸元で両手をぎゅっと握りしめていた。
センは、
「よかったじゃねぇか。俺の記憶なんかクソの役にもたたねぇ」
淡々と言い放った。
その声音は軽い調子を装っていたが、視線の奥には重い影が潜んでいる。
「ふざけんな!!」
トコが怒鳴った瞬間、涙で濡れた瞳が怒りと悲しみで揺れた。
その必死の否定に、センは肩をすくめるように表情をゆるめる。
「キレるなよ。更年期か?」
わざとらしい軽口。
今にも折れそうな空気を、
いつもの無茶な道化で押し返そうとする。
トコは、
「これからも……忘れていく……今、話したことも……『よく頑張った』って褒めてもらえたことも……想いを伝えたことも……抱きしめてくれたことも……全部……全部……」
喉を震わせながら、必死に言葉を吐き出した。
「タイムリープすることで、あんたの記憶は全部消える……あたしの記憶も一部が消える……いずれ、なんにもなくなる……あたしとあんたがやったこと……全部……」
その目には、どうしようもない絶望の色がこびりついていた。
なによりも大事なものを失い続けるという恐怖。
そんな悲痛の底に沈む彼女に、センは、
「心配するな。今回で終わらせてやる。もう何も消えねぇ」
短く言い切った。
そこには、逃げも誤魔化しもない。
道化を突き詰めて決意と未来を『騙』る。
「だから! 死んでほしくないと、何度言わせれば――」
トコの叫びは、命を裂くような響きを帯びた。
その声の裏にある想いを、センはまっすぐ受け止める。
「そんなに言うなら、死にもしねぇよ。ただただ俺が勝つ。黙って見てろ」
揺るぎない圧。
場を支配する狂気の声色。
トコの涙を正面から受け止めながら、
センは病的なほど、『前』だけを向いていた。
「ほんまに? ……ほんまに勝つ?」
「192%勝つ。8パーセントほど負ける可能性があるが、そのぐらいは目をつぶれ」
「……パーセントの意味、わかっとる?」
「知らんよ」
その『徹底してイカれた道化ぶり』を前に、流石に笑ってしまうトコ。
あらためて、トコはセンエースの凄さを思い知る。
これだけ絶望的な状況なのに、
センエースがいると、なんだか立ち向かう勇気が湧いてくる。
★
――またもや紆余曲折を経て、この周の『ラスト戦』が開始した。
始まった瞬間から、世界そのものが悲鳴を上げているようだった。




