6085話 あとは俺がどうにかする。
6085話 あとは俺がどうにかする。
トコは両手で頭を抱え、低くうめきつつ、
「あのクソバカ性悪女のぼけぇ……一生、あたしの邪魔しかしやがらん……もう、殺したいぃ……」
何度も溜息をついてから、トコは顔を上げた。
視線に迷いはなく、肩の力を抜いたまま言う。
「もうええ、またやったる。こんなんで諦めへんぞ」
ぐっと奥歯をかみしめ、現状を整理するように眉を寄せた。
「しかし、また最初からプランの練り直し。だるいわぁ……てか、こんなもん、どうすればええんや……ユズに嫉妬されんように、ヨイショでもしたらええんか?」
言葉とは裏腹に、トコの表情には焦りが滲んでいた。
しばらく考え込み、唇の端をかすかに噛む。
「えぐいな……どうしよう。まあ、ええわ。またタイムリープして考えようか……」
と、そこで、
センが、トコの前に立ち、
「もうしなくていい。あとは俺がどうにかする」
トコは顔を上げ、怪訝そうにセンを見た。
「どうにかって……どうすんねん」
「気合で殺す。最初からそうすべきだった。無駄にずさんな策を練るから付け込まれる。力こそパワー。困難はゴリ押しでムリヤリ突破するのが華。結局、力業こそが最強」
その一言に、トコは乾いた笑いをこぼした。
「ははは」
笑いながらも、どこか呆れたように肩をすくめる。
「あんたはブレへんなぁ……毎回、それやん」
「……毎回……ねぇ。薬宮トコ。お前、マジで、実際のところ、何回、タイムリープした?」
トコは少し黙り、スマホを取り出した。
指先で画面をいじりながら、視線を落としたまま答える。
「覚えてへんよ。そんなもん、いちいち」
疲れた笑みを浮かべるトコに、
センは、
「もういい。マジでやめろ。……絶望も苦悩も、俺が全部背負う。俺に任せろ。必ず、理想のトゥルーエンドに辿り着いてやる。だから――」
「センエース」
「あん? なんだよ」
「月が綺麗ですね」
そう言ってから、トコはエピソードを削除した。
――リライト、発動。
彼女の記憶だけ、過去に還る。
センエースの心には何も残らない。
★
――夕暮れ過ぎ。
トコはひたすら、パソコンの前で文章を紡いでいた。
カメラが入っていない刑務所の中のセンエース物語は、
情報に飢えている読者を大いに沸かせた。
ヒッキエスの物語に続いて、チャーリーの章も投入……しようとしたところで、
トコの中に『未来の意識』がガツンとぶち込まれる。
「ぷはぁあ!」
蘇った時のユズみたいに、
肺一杯に酸素を吸い込むトコ。
「はぁ……はぁ……」
心底しんどそうな顔で、タメ息交じりに、
「さて……どうしたもんかなぁ……」




