6079話 無敵。
6079話 無敵。
地面が抉れ、爆風が巻き上がり、焦げた臭いが漂う。
(おっと……マジで、なにをしてもノーダメくさいな……バグ殺しの奥義『真醒・裏閃流』を通しても、特に変化がねぇ。バグとかチートじゃなく、正式に無敵。くそが……ウゼェなぁ……)
ダルそうに心の中でつぶやきながらも、センの動きは止まらなかった。
彼の両手は光の残像を描き、次々と術式を叩き込む。
だがその全てが、相手の周囲で霧散する。
山ほどの攻撃を完全に無効化されたことで、センは奥歯を噛みしめた。
「ちっ」
乾いた音が響き、センは一気に距離を取った。
砂煙の中で立ち止まり、薄く笑う。
「無敵はズルいぜ、ベイベ。ちゃんと戦おうぜ。なんだったらハンデをくれてやるからさ。俺は両手両足を使わないから。それならいいだろ?」
「……」
「じゃあ、歯も使わない。頭も使わない! ……それで、どうやって戦えばいいんだ! ふざけるな!」
冗談めかした声を張り上げるセン。
わざと大げさに肩をすくめ、空気を和らげようとする。
だがその笑みにも、焦燥が滲んでいた。
ラストは一切、彼の軽口に反応しない。
無表情のまま、冷たい目でセンを見据えている。
「センエース……あなたはここで死ぬ」
その声音に一片の揺らぎもなかった。
静寂を裂くように、ラストが動く。
空気が震え、殺意が形を成す。
それを見てセンは、わずかに肩を落とし、息を吐いた。
「まったく……しゃあないねぇ……」
そう言いながら、パチンと指を鳴らした。
金属の弾けるような音とともに、世界の輪郭が歪む。
次の瞬間、センとラスト、両方の姿が掻き消えた。
★
センとラストが転移した場所は鍛練世界ヴァルハラ。
そこは、暗い大地。
空気は鉛のように重く、赤黒い光が地平線を不気味に染めていた。
焼けた鉄と血の匂いが鼻を刺し、耳の奥では風が呻くように鳴っている。
――無数の影が地面を埋め尽くしていた。
その正体は、センが過去に捕らえ、鍛え上げた『犯罪者』や『軍人』たち。
彼らはこの地獄のような環境の中で、今日まで徹底的に鍛錬を積んできた。
ちょっと前まで、魔法の一つも使えない『ただの人間』だった彼ら……しかし、今、彼らのオーラと魔力はギンギンに研ぎ澄まされている。
『誰が来ようと秒殺してやる』とでもいいたげな自信に満ちた表情。
縦横に整然と並ぶ完全武装の兵たち。
冷たい鎧の表面には、暗い空の赤光が反射している。
その最前列に、センとラストの二人が転移して現れた。
ピシッと殺気で揺れる空気。




