6074話 バグを殺すバグみたいな拳。
6074話 バグを殺すバグみたいな拳。
「はぁ……はぁ……」
ふらつきながら、どうにか立ち上がってセンを睨むロキ。
膝が笑い、呼吸はまだ荒いが、瞳の奥には消えない闘志が残っていた。
その視線を受けてセンは、ゆっくりと足を止める。
靴底が瓦礫を踏み、乾いた音が短く弾けた。
「いいぞ、ロキ。気合いだけは30点だ。1億点満点中のなぁ」
「……なぜ、俺の評価が、そんなに低いんだ? 強さはともかく、根性だけは、それなりのものを見せていると思うが?」
「いや、低くねぇよ。だいぶ高いぜ。一般人はだいたい『コンマ2』とかだから」
「……ちなみに、その評定における、お前自身の点数は?」
「そうだな……170000点ぐらいじゃないかな」
「……たいそうな自己評価だな」
そう言いながら、ロキは、センの目の前まで歩き、胸の前で拳を固く握った。
まだ足取りは不安定だが、背筋だけは折れない。
「……最後に見せてくれないか。……命の頂点を」
その要望に、センは、まっすぐな顔で視線を合わせた。
瞳の揺れはない。
決着のときを知る者の静けさだけがあった。
「いいよ」
そう頷いてから、右こぶしを握り締めて、スッと腰を落とす。
肩の力を抜き、丹田に重心を沈める。
拳の気血が満ちていく。
空気が一段重くなるような、無音の圧が場に満ちた。
そして、そのまま、わずかな吐息とともに唇が動く。
「……真醒・裏閃流絶技……閃拳」
閃壱番は、自分の名前がついた必殺技を口にする。
その狂気的なダサさが、その右こぶしをより深く輝かせる。
バグを殺すバグみたいな拳。
やっていることはただの正拳突き。
だが、踏み込みは無音で、腕は軌跡を残さない。
拳が伸び切るより早く、衝撃だけが空間を先行した。
全てを置き去りにする……極限を超えた鍛錬の結晶。
「ごふっ……」
ロキの腹部は、盛大に貫かれた。
空気が押し出される鈍い音が遅れて響き、ロキの背がわずかに反り、膝が床を探すように沈んだ。
拳は過不足なく引き戻される。
センの姿勢は乱れない。
静寂が戻り、瓦礫の上を舞う埃だけが、ゆっくりと落ちていった。
バタリと倒れこんだロキ。
その身体から荘厳で神々しい光があふれだす。
たゆたう光は、ゆらゆらと揺らめきながら、センの中へと戻っていった。
「はい、回収と」
奪われた力を取り戻したセン。
倒れているロキを見下ろして、唇の端をわずかに上げた。
「……さて、それじゃあ本番だ……」
パキパキッと全身の関節を鳴らす。
骨の軋みが低く空間に響き、重苦しい緊張がふたたび戻る。




