6062話 金だ、金。俺は金が欲しいんだよ。
6062話 金だ、金。俺は金が欲しいんだよ。
「払わないヤツは、俺に対して悪意を向けたと判定し処分する。救われたいやつと、切り刻まれたくないやつは金を払え。シンプルだろ? 安全に生きていく上での税金と考えれば、これほど安いものもない」
静かな笑みの奥で、瞳だけが冷えた鋭さを保つ。
提示された条件は乱暴でありながら迷いがない。
そこで、スタジオにいるアナウンサーの一人が、
「あ……あの……」
と、ビビりながらも、手を上げた。
指先が震え、台本の端がわずかに折れる。
照明の熱に頬をこわばらせながら、アナウンサーは言葉を探している。
センは、
「質問か? いいだろう。受け付けてやる」
ゆっくりと首を向けた。
その視線の重さに、スタジオ内の空気がわずかに沈む。
「に、2万円となると……子供などは……払えないと思うのですが……発展途上国の人間なども無理かと……」
「だから?」
センの短い返しは鋭く、アナウンサーの肩がビクッと跳ねた。
「え、だからって……いや、ですから……その対応は?」
「俺はお前らのお母さんか?」
「……」
アナウンサーは口を閉ざし、目だけが泳ぐ。
「俺は国でもなければ企業でもねぇんだよ。好き放題生きているだけの怪物だ。ホワイトな対応なんざ求めてんじゃねぇよ」
センの声は平坦で、しかし容赦がなかった。
周囲のスタッフが息を呑み、モニターの光が硬く揺れる。
「し、しかしですね……たとえば親のいない子供などが2万円を稼ぐためには、犯罪をするしかないわけで……」
「くく……」
低い笑いがセンの喉から漏れた。
アナウンサーは青ざめ、問い返す声が細る。
「な、なにがおかしいので……」
「そいつらが、仮に『救い』を求めた場合、誰が切り刻まれるんだろうな」
「……」
言葉が途切れ、スタジオに沈黙が落ちた。
センエースの目は、その『軽やか過ぎる口』以上に雄弁だった。
『深すぎる狂気』を孕んだ……『深淵』とメンチを切り合っている瞳。
「世界中の為政者に告げる。前にも言ったが……ここからは、さらに死ぬ気で『生き残る方法』を考えた方がいいぞ。そうじゃなきゃ……たぶん、容赦なく、俺の刃に切り刻まれる」
「……」
★
世界が、静かに、しかし決定的に修正されていく。
ニューヨークの路地裏。
「た……助けて……誰か……」
逃げ場を失った少女の弱い叫びが空に溶けた時、
白い光が鋭い弧を描き、暴漢の手首がアスファルトに弾かれる。
悲鳴が上がる前に、もう一度、鈍い衝撃音が響いた。
彼女を襲っていた男は武器を落とし、倒れこむ。
手首と足首がなくなっていた。




