6060話 かっこいい世界征服。
6060話 かっこいい世界征服。
「だから、センエース……様が! 全世界にメッセージを出すと仰っているんだ! ――あ? 内容なんか知らんよ! 聞きたければ、あんたが直接聞いてくれ!」
連絡はまず総務当局(総務省)に回り、内閣官房の危機管理ラインが即座に起動した。
スタジオのマルチモニターには官邸と各省の多地点接続ブリッジが並び、庁舎名のテロップが白く点滅する。
連絡を受けた官僚たちは驚きと困惑を隠さない。
即時、短い協議が断続的に行われた。
『またセンエースか。……アメリカの刑務所に入ったかと思えば、今度は電波ジャックとは。……やれやれ。仕方ない。今回に限り、電波法の事前承認は無視しろ。今回は後追いで処理して追認しておく。官邸には『黙示的許容』で通知を回す。局には技術ログと送出記録の保存だけ指示しておけ。あん? 勝手にさせていいのかって? 止めたければ、あんたが止めてくれ。私は嫌だ」
――数分後には、局内のサブ系が立ち上がり、
運用会社のNOCを通じて既存の衛星回線に予備トランスポンダが割り当てられた。
配信事業者には要請が出され、緊急プロトコルが適用される。
主要CDNがキャパを増強し、ミラーが一斉に開く。
スタッフは息を呑み、機材のスイッチを一つずつ確かめた。
センはカメラに鋭い視線を送り、周囲のスタッフに短く尋ねる。
「いけそうか?」
「は……はい……」
ディレクターの声は震えていたが、返答は明瞭だった。
技術者が最終確認を行い、フロアの足音が次第に揃っていく。
カメラが彼を狙い、ライトが額の汗を浮かび上がらせる。
小型モニターのタイムコードが一致し、
スピーカーの1kHzトーンが一巡する。
「……どうぞ。メッセージを」
ディレクターの声が静かに指示の終わりを告げる。
センは深く息を吸う。
(かっこよく世界征服……か。俺には無理な芸当だ。しかし、それが最善だというのであれば……)
覚悟を入れて、気合を入れて、自分の中で折り合いをつけてから、
「もう怯えなくていい。俺の剣は、お前らを迫害する悪意を、容赦なく切り刻む」
そう言いながら、センは、右手を天に掲げる。
照明の白が甲に集まり、指先の先へと細く伸びる。
呼吸は一定で、胸郭の上下もわずか。
「こいつは『守護の剣翼』……俺は、『亜空間(この世界の裏側にある領域)』に、この『魔法の刃』を10億本ほどセットした」
センエースの言葉は世界中に配信されている。
世界中の全人類がかたずをのんで、センの言葉に耳を傾ける。




