6059話 完璧で究極な世界征服。
6059話 完璧で究極な世界征服。
「セン。あんたには、もう一つ、やってもらうことがある」
「……なんだ?」
「カッコよく世界征服をしてほしい。イカれた連中はシバき倒してええけど、普通に真っ当に生きとる連中には優しく手を差しのべて……完璧な世界の王になってほしい」
「……」
「変に悪ぶったりせず……いや、まあ、もう、それに関しては言うても無駄やから、ええんやけど……なるべく、かっこよく世界を救ってくれ。それを小説にすれば、みんな喜んで読む。そうすれば、あたしの死者召喚レベルも上がる。つまり、ラストを殺しやすくなる」
「俺は悪ぶったことなんかねぇよ。ただ自分の――」
「もうええねん。そういうの。聞き飽きたわ。何回、同じこと言うねん。アホちゃうか!」
「何回も……言ってないと思うんですけど……」
「自分の命も時間も全部削って、救いを求める全員を助けて、でも称賛されるのは照れ臭いからって、アホみたいに悪ぶって……キショいねん。ええ加減にせぇ!」
「……知っているか、薬宮。思春期の男の子はね、女の子からキショいって言われるのが、何よりも辛いものなのだよ」
「何兆年も生きとるくせに、なにが思春期やねん」
「心は今でも中学二年生なんだよ」
★
テレビ局のロビーに、彼――センエースは突然現れた。
青い長羽織の裾が床に短い影を落とし、
群がるスタッフの間をすり抜けてスタジオへ向かった。
「でぇ?! ……せ、センエース……っ」
モブの誰かがおののき、腰をぬかす。
隣のディレクターが冷や汗を浮かべ、
「あ……アメリカの……刑務所にいたんじゃ……」
「ま、間違いなく、そのはず……です」
技術の若手が小声で続ける。
「なんで……センエースがここに……」
その声はすぐに飲み込まれ、場内にはただ重い息遣いだけが残った。
センはスタッフの驚きなど気にも留めず、
スタジオの中心に立ち、静かに周囲を見渡す。
カメラの黒い瞳がセンを捉え、照明が額に冷たい円を描いた。
センは、『この現場の責任者』と思しき人物に視線を固定し、
「これから、世界に向けてメッセージを出す。準備を整えろ。テレビもネットも全部。とにかく、俺のメッセージが、より多くの人間に伝わるようにしろ」
その命令に逆らえる者はいない。
なにせ、相手は単騎で世界中の軍と渡り合える怪物。
人型の核兵器と言っても過言ではない。
「しょ……少々お待ちを……」
ディレクターの手が微かに震え、社内および系列各局の緊急連絡網が動き出した。
連絡先の一覧が次々とめくられていく。




