6055話 ラストにはもう一つ、別格の異常異能がある。
6055話 ラストにはもう一つ、別格の異常異能がある。
震えている彼女を見ながら、センは、
「……なんでキレてんだ」
まぶたが半分だけ降り、探るような光が灯る。
トコは、ガンギレの目でセンを睨んで、
「キレてへんわ! あたしをキレさせたらたいしたもんじゃい! あたしをキレさせたら生きて帰れへんど、くされぼけ、かす、われぇ!」
キレていないと、ブチギレて叫ぶ。
口調だけが荒ぶり、姿勢は崩れずに正面をとらえ続ける。
センは肩をすくめ、
「koolになれよ。まだ慌てるような時間じゃない」
手首を返して腱を伸ばした。
乾いた関節音がもう一度だけ鳴り、空調の風に混ざって消える。
「はぁ……はぁ……」
トコは肩で二度呼吸を刻み、腹に力を入れて、吐き切ってから、
「……ええか、よく聞け、センエース。『双子の邪神ラスト』には、『姉妹の片割れを倒した相手に対して無敵』というチート以外に……もう一個……アホみたいなチート能力があるんや」
言葉を置く位置を測るように、トコは一拍の間を空けた。
声は低く平板で、余計な装飾を削ぎ落としている。
センの耳朶がわずかに動き、視線が一点に結ばれる。
「ついには俺の知らない情報まで飛び出しやがった。パないねぇ。……つぅか、マジかよ。まだチートもってんのか、あいつ」
センはしんどそうに、小指でミミクソをほじる。
心底ダルそうに溜息をつくセンに、
トコは、続けて、
「ラストの持つもう一つのチート……それは『グリード』。望むものを手に入れる力」
トコの声は、乾いた紙にインクを落とすみたいに、はっきりと広がった。
センは、何度目か分からないため息をつく。
吐息は深く疲労を含んでいたが、表情には薄い嘲りが残っていた。
「望むものを手に入れる……えぐいねぇ……」
トコの言葉を受け、センは肩先だけで小さく笑う。
本気の称賛ではなく、事態の凄まじさを認めつつも面倒を嫌う笑いだった。
「グリードは、もともとはロキの中に眠っとった力。あんたがロキを謎に生かしとった理由は、ロキがラスト召喚のトリガーになるから。あんたはヴァルハラ軍団を鍛えきったところでロキを殺してラストを召喚する」
トコは視線をそらさず、言葉を一つずつ丁寧に置いた。
その口ぶりには計算と諦観が混ざり、感情を揺さぶる重みがある。
「すごいね。ほんとに全部わかっている御様子」
センは眉をわずかに上げ、目の端でトコを見た。
トコは続けて、
「その時、ラストは、『生贄となったロキ』と一つになって、ロキの力である『グリード』を獲得する。そして、グリードで『ヴァルハラ軍団を奪い取る』……という流れや」




