6052話 もう知らないことは、ほとんどない。
6052話 もう知らないことは、ほとんどない。
画面の向こうで、世界中の言葉が交錯していた。
称賛と疑念、畏怖と感動。
すべてが渦を巻き、トコの物語を飲み込んでいった。
感想をざっと流し見てから、
トコは小さく息を吐き、ぽつりとつぶやく。
「実際は『兆』どころやないけどな……その上の桁まで届いとるんやで、あのアホは……ホンマにキモすぎるよなぁ……」
その声には、呆れ、敬意、そしてわずかな哀しみが混じっていた。
――次の瞬間、背後で空気が裂けた。
バチバチと火花のような音を立て、空間そのものがひずむ。
光と闇の境界が歪み、そこにぽっかりと亀裂が走る。
トコは、わずかも驚かない。
まるで見慣れた現象を確認するように、淡々と振り返った。
そこに現れたのは――センエース。
トコが描く『転生文学センエース』の『急な変貌ぶり』に度肝を抜かれ、慌てて刑務所を抜け出し、ここまでやってきた。
次元の傷口を踏み越え、ゆっくりと姿を現す。
その男の眼差しは、余裕でガン切れしていた。
「……おい、薬宮トコさんよぉ……なんだ、この異常に美化しまくった内容は。俺、最初にちゃんと言ったよな? 美化だけはするなよって。俺のイカれたところを描くのは好きにすればいいが、キモいことだけはするなよって」
マジギレしているセンの言葉は、部屋の空気を掴んで振り回すように鋭かった。
声の震えとともに含まれる激情が、机の上の参考書やパソコンの冷たい光を揺らした。
トコは冷めた目でそれを受け流し、まるで子供の癇癪を眺めるような距離感で視線を合わせた。
センは続けて、怒気を強めたまま、
「反省しろ。二度と、俺を美化しないと魂の芯に誓え。今後は、できるだけ俺のことを悪く描くんだ。性根が腐っていて、言動がバグっていて、人を虫ケラのように思っている修羅。それが俺だ。いいな。――おい、返事はどうしたぁ! 俺の言うことが聞けんのか、ナッパぁぁ!」
怒りを乗せたセンの言葉が部屋中に響き渡る。
けれど、トコは一切動じない。
センエースという、世界中の軍を単騎で皆殺しにできる怪物の怒りを前にして、トコは異質なほど平然としていた。
彼女の表情は、いっそ冷淡なほど無愛想で、眉間に浅いシワが寄るだけだった。
『アホがまたアホなことをほざいとる』とでも言いたげな冷めた顔で、
トコは、ぽつりと、
「……『殺戮レベル』はもう十分や。いま以上に上げると逆にマイナス。むしろ、『ラスト』に勝てる可能性が低くなる」
今夜は、仕事の方で、少々対応しなければいけないことがありまして、
感想返信は明日の朝になります。
返信が遅れること、申し訳ありません<m(__)m>
いつも、暖かい応援、本当にありがとうございます!




