22話 財務省の覚醒。
22話 財務省の覚醒。
その夜、霞が関の明かりは消えなかった。
財務省の庁舎全体が、まるで巨大な船が嵐を越えようとするかのように震えている。
幹部会は徹夜で続いた。
机上には分厚い予算案、消費税収の推移、国債残高、
そして格付け会社からのレポートが散乱している。
コーヒーは冷め、シャツの襟はくたびれ、誰も椅子から立ち上がらない。
「……センエースが後ろ盾についた」
事務次官が静かに言った。
声には恐怖と同時に、奇妙な安堵が混ざっていた。
「これからは、『増税して海外に認められる』ことで出世する時代は終わる。成果は――国民生活をどう改善したかで測られる」
重苦しい空気の中で、若手の主計官がぽつりと漏らした。
「……やっと、まともに戦えるんですね。今まで日本をナメ腐っていた連中に……めにものを見せてやりましょう」
★
――一方、永田町。
与党幹部は怒り狂っていた。
「財務省が勝手な真似を! センエースに賭けたら、この国は孤立する! あれは神ではない! ただの災害だ! 受け入れるのではなく、対処すべき方法を考えるべきなんだ!」
「……元気がいいのは結構だが……アレに逆らえば問答無用で殺されるぞ。自衛隊や闇川のように……」
「ぐぎぃい……あの糞野郎ぉ……」
政治家たちは誰も正面から反対できなかった。
世論はすでに、財務省の『転身』を喝采し始めていたのだ。
もちろん政治屋の中でもセンエースの活躍で日本が復興すると喜んでいる者もいる。
国益を最優先で考える本物の政治家連中の大半は、センエースを歓迎していた。
だが、声が大きいのは、たいがい売国寄りの蛆虫。
日本を切り売りして懐を温めていた連中は、センエースの快進撃が歯がゆくて仕方ない。
★
――海外の圧力
翌朝、アメリカ財務省から抗議が飛び込んだ。
電話口の声は鋭い。
『日本は勝手な減税や財政拡張をするな! 日米の信頼を壊す気か!』
IMFも声明を出す。
『日本は財政規律を逸脱している。世界経済を揺るがす行為だ』
そして格付け会社の速報。
『日本国債の格付けを引き下げる可能性あり』
たった一行がマーケットを揺らし、円は乱高下した。
★
――世論とSNS
スマホ画面は炎に包まれていた。
「ついに財務省が国民の味方になった!」
「国全体がセンエースに守られるとか、最強すぎ」
「でもアメリカ怒ってるぞ、戦争になるんじゃ……?」
「そうなったら、センエースがなんとかしてくれるだろ。誰もあの怪物には勝てない」
「国債格下げ? そんなの関係ねえ! 俺たちの給料上げろ!」
「いや、これ、ローン金利上がるだろ……うち死ぬわ」
笑いと恐怖、喝采と不安。
国民感情は、激しく揺れ動いていた。
★
――財務省の決意
再び、深夜の会議室。
理財局長が書類を握りしめ、うつむいたまま言った。
「……敗戦国に権利はないと思っていた。我々は永遠に戦後を生きるのだと……。だが、センエースは『迷わず矜持に生きろ』と言ってくれた」
主計局長が顔を上げる。
その目は赤く充血していたが、曇りはなかった。
「ならば、今度こそ国民を守るために戦おう。我々の知性を、この国のために使おう」
会議室の誰もが、深く頷いた。
それは恐怖ではなく、覚悟の表情だった。
自分たちは、ついに『敗戦国の清算係』ではなくなった。
これからは、この国の未来を選ぶ担い手なのだ――財務省はついに『戦後』を越えたのだ。




