6話 ちょっといいかな。
6話 ちょっといいかな。
通知は止まらない。
感想、ブクマ、レビュー、海外からの翻訳依頼。
もちろん、書籍化依頼もバンバンきている。
大手メジャーから、小規模レーベルまで、その数は数十に及ぶ。
どれも現実感が薄く、ただ数字だけが荒波のように跳ね続けていた。
ただ、その辺に関しては興味がなかった。
トコは別に、書籍化を求めていたわけではない。
それよりも大事なことは……
(200万の記憶と、300万の記憶……どっちを先に見るか……)
トコが眉を寄せた瞬間。
「……」
隣から影が差し込んだ。
厚いアイラインにラメ入りシャドウ。教室の女王様。
ユズの瞳がスマホの画面を鋭くのぞき込む。
「!」
トコはとっさにスマホを胸元に隠した。
「人のスマホを横からのぞくんは、現代社会における一番のマナー違反やで」
声は低く、刺のある調子で。
ユズは一瞬だけ視線を細め、唇をわずかに歪めた。
「……あんたってさ……やっぱり……」
言葉が続こうとしたその時。
「こら、私語はやめなさい」
教師が近づいてきた。
だがトコの顔を見た瞬間、その表情が一瞬止まった。
「……っ」
喉が詰まるように、それ以上は言えない。
この教師ももちろん知っている。
――あの日、トコがロキの部隊を制圧したことを。
そして、そのことを、絶対に話題にしてはならないことを。
教師は目を逸らし、ただ咳払いをして壇上の方へ戻っていった。
ユズもそれ以上何も言わず、トコはスマホを握りしめたまま、重たい沈黙に包まれた。
★
集会が終わり、教室へ戻る途中。
廊下の角で、一人の男子が立ち止まっていた。
「ごめん、ちょっといいかな」
同級生の城聖司。
別クラスの超イケメン。
スポーツも成績も上位。女子人気も高い学校の主役。
「は? なに?」
トコが立ち止まると、彼は小さく息を吸い、真剣な目を向けてきた。
「あの時のこと……あまり言われたくないっていうのは知っている。全校チャットで通達がきてたから。国と……センエースから。……でも、俺、お礼だけは言いたくて……助けてくれてありがとう」
トコは肩をすくめた。
「あたし、なんもしてへん。やったんはセンエースや。お礼ならセンに言えばええ」
「……いや、そういうていになっているのは、わかっているけど……」
「てか、あんま話しかけんといてくれ。学校生活は、静かにやっていきたいんや。あんたみたいなイケメンに声をかけられたところを他の女子に見られたら、変な誤解をうむ。そういう勘違いはマジでしんどいねん」
城聖は唇を噛み、そして決意を込めて言った。
「……あ、ああ、わるい。ただ、これだけは言わせてくれ。俺、君のことが好きなんだ」




