トコ22話 流儀。
トコ22話 流儀。
「くっそぉおおお! これなら、どうだぁあああああああああ!」
ロキの怒声が体育館を震わせた。
彼は懐から黒いスイッチを取り出すと、ためらいなく押し込む。
――ギギギギギッ!!
天井パネルが弾け、隠されていた機関銃が複数台、牙を剥いた。
赤い照準が一斉に生徒たちを捕捉する。
「ちょちょちょ!」
「マシンガン?!」
「うわわわ!!」
次の瞬間、火を噴いた。
銃口から吐き出された鉛の豪雨が、雷鳴のように体育館を揺らす。
「……なかなかの用意周到ぶりだぜ」
センは薄く笑みを浮かべると、落ちている銃をもう一つ拾って、二丁拳銃の構えをとると、そのまま、
ババババババババババババババーー!!
撃ち込まれる弾丸の雨を、目にも止まらない早撃ちで弾き飛ばす。
弾道が弾道をぶつかり合い、火花を散らし、壁や床に無数の傷を刻む。
――まるで当然のように、生徒たちの頭上には、一発たりとも届かない。
「や、やばぁ……!」
「撃ち落としてる! 全部……山ほどのマシンガンの弾を……二丁で撃ち落として……」
「信じられねぇ……」
「これ……マジで、夢じゃないの?」
「ハリウッド映画でもやりすぎの演出なんだけど……」
誰かが震える声で実況し、誰かが歓声を上げる。
恐怖に塗れていた空気は、奇跡の連続に呑み込まれていった。
やがて――センの照準は天井へと移る。
残弾を正確に叩き込み、火を噴く機関銃を一つずつ撃ち落とした。
ガシャアアアアンッ!
鉄の塊が床に墜ち、轟音と火花を撒き散らす。
大半は誰もいない場所に落ちた。
センは全てを計算している。
だが、
「くそがぁああああ!」
落ちて来る機関銃の一つに、ロキが銃をぶっ放した。
その結果、軌道がずれて――ユズの真上に落ちてきた。
「ひ……っ」
腰が抜け、逃げることができない。
頭上の影が迫る。
その瞬間。
「――だから、大丈夫だって」
センが飛び込む。
まず足を振り上げ、落下してきた機関銃を蹴り上げて軌道を逸らす。
そのままユズを抱き寄せ、覆いかぶさるように身を盾にした。
火花が背中に降り注ぐ。
その一連を見て、ロキが、
「とくと魅せたなぁあああ、スキをぉおお!」
咆哮をあげた。
――ズガンッ!!
ロキの銃口から放たれた弾丸が、センの肩を貫く。
赤い飛沫が散った。
それはあまりにも美しい鮮血。
「っ……!」
ユズの喉から短い悲鳴が漏れた。
見上げた視界に映るのは、血を流しながらも揺るがぬ瞳。
「き、傷……血……」
震える声。
幼子のように、単語しか口にできない。
センは軽く首を傾げ、あくまで落ち着いて答えた。
「流れ弾が当たったりしていないか?」
ユズの胸が大きく揺れた。
恐怖も、涙も、痛みも――その一言で一瞬にして塗り替えられていく。
(……どうして……なんで……なんでっ!!)
心臓が焼けつくように跳ねた。
この瞬間、ユズは心に、センエースが刻まれた。
二度と消えない痛みと甘さで、ユズの心を締め付ける鎖となったのだ。
センは血を拭いもせず、ユズを庇ったままロキを睨む。
その眼差しは一切の迷いを帯びていなかった。
「一般人がダメージを受けるってのは、俺の流儀に反するんでね」
低く、しかしはっきりとした声が、体育館を支配する。
センはゆっくりと立ち上がり、二丁の銃を雑に捨てながら、
「さあ、ヤンチャボーイ……続きと行こうか。つまらない余興は終わりにして……どっちかが死ぬまで殴り合おう」




