表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

ミッション25 『クラーク叔父さん襲来』

 南の島への休暇から終わったノーチラスの面々、カグラ達は急に忙しくなった。国際、いや宇宙規模の大会で一般予選を勝ち上がった無名の新人レーサーとしていくつ物取材や運搬依頼が駆け込んできたのだ。

 もっとも、怪しい仕事、主にグラビアやゴシップになるような取材はカルメンのほうで断ってはいるが、それでも忙しさには変わりが無い。

 広い貨物室の中を重機を使い荷物を整理するヤマト、入り口から向日葵が手を振っているのが見えた。

 荷物を重機から降ろし向日葵の近くまで歩くヤマト。


「ヤマ坊お疲れなのじゃ、んでな。ヤマ坊に面会者が着てるぞよ」

「誰だ」

「クラークとか言っていたの。どうも堅気じゃない雰囲気じゃの、知り合いかえ?」

「クラーク、ふむ知らないな取りあえず会って見る事にしよう」

「それじゃ、伝えたぞい。ワシはエンジンの調子をみる。応接間にいるそうじゃ」


 作業着のまま廊下を歩くヤマト。応接間と書かれた部屋の近くに行くと室内から声が漏れて聞えてくる。


「やだーもう。可愛い船長だなんて、クラークさんは口が旨いんですから」

「いやなに。思った事を言ったまでですよ」


 一人は船長であるカグラの声である、もう一人の声は中年の男性の声でありヤマトも聞き覚えがあった。

 急いで応接間へと入ると。雑誌を持つスーツを着込んだ男性とカグラ、そしてその横にいるカルメンが居た。


「お嬢様、ヤマトさんが来ましたので。此方も仕事に戻りましょう」

「えーいいじゃない。もう少し居ようよ」


 ヤマトを見て片手を挙げる男性。ヤマトのほうは入り口から動かないで居た。


「あれ? ヤマトどうしたの?」

「い。いや……どうして た、たい……」

「ん? どうしたワシの名前はクラークだぞ」


 ヤマトの言葉を遮るようにクラークが力強く言い放つ。気にした様子も無いカグラが話を続けた。


「そうそう、来ないだの写真が雑誌に載ったでしょ? その時にほらここ」


 クラークの持ってきた雑誌を広げカグラと京子が映っている画像を指差す。後ろに顔半分のヤマトが映りこんでいた。


「どうした、ヤマト、そんなにびっくりする事もあるまい」

「ねーでも、偶然って凄い、ヤマトの叔父さんがこの写真を見て尋ねてくるだなんて」

「叔父さんですか……」

「何かしこまってるのよ。遠い所から尋ねて来てくれたらしいよ」


 ごく自然な笑顔でヤマトに話しかけるクラーク。とても数ヶ月前にヤマトと話したぶっきらぼうの喋り方の男に見えなかった。


「久しぶりだのーヤマト元気にしていたか」

「お嬢様そろそろ」

「んー、そっか積もる話も水を差しちゃわるいか」


 二人っきりになるヤマトとクラーク。ヤマトが重い口を開く。


「隊長……どうしてここに」

「ったく、今はクラークって言ってるだろう」

「しかし……」

「しかしかぁ、まさかのしかしだな。ヤマト、お前此間忍び込んだだろう」


 何の話がわからず思わず聞き返すヤマト。


「は?」

「月面ドックだよ。まったくオレが要らない事を言ったばっかりに……」


 溜息を付き下を向くクラーク。テーブルに広げた雑誌をめくりグラビア特集のページを熱心にみている。


「誰かか侵入したまでは特定したんだが、それを調べるのに時間くっちまってな。で、どうおもった」


 どう思ったとはドックの中で見た船の事だ。何て答えて良いのかわからず黙っているヤマト。


「隊長はそれを聞いてどうするんです」

「ふ、確かにな、さてオレも仕事をしないとな……」


 胸ポケットから葉巻でも取り出す仕草を見せると、拳銃を狙いも定めずにヤマトへと撃ちだすクラーク。その行動がわかっていたかのように、ヤマトは近くにあった金属製のトレイでその起動を外した。


「うわ、この馬鹿野郎。跳躍するじゃねえか」


 ヤマトの行動を全て見る前にソファーの裏へと隠れるクラーク、銃弾は壁を飛び回り先ほどまでクラークが座っていたソファーへとめり込んだ。

 同じく反対側のソファーの影に隠れたヤマト、その手には此方も拳銃が握られている。


「しかし、この狭い部屋で打って来たのは隊長であります」

「馬鹿野郎、上官が撃っているんだ素直に撃たれておけっ」


 無茶苦茶な理論を言うクラーク。対するヤマトも反論をする。


「お言葉ながら、元です」

「オレは今でもヤマトの事をおもってだなっ」


 身を乗り出して連続発砲をするクラーク。銃弾はソファーの一部分を壊し跳んでいった弾が花瓶などを壊してく。

 直ぐに応戦するヤマト。その行動を見たクラークはソファーの影へ隠れた。

 ヤマトの顔を出した所へ次の銃弾を打ち込むクラーク。狙いは正確であり、ヤマトが隠れてなければ今頃は蜂の巣に成っていただろう。


 ボロボロになった応接室で御互い壊れたソファーに背中を預けながら息を吐く。銃の弾数表示を見ながらクラークが声をかけた。


「ヤマト」

「何でしょうか隊長」

「残り何発だ」


 ヤマトの居る場所からはクラークの姿はみえない、狭い部屋に声だけが響いてくる。ヤマトが手元の銃を確認すると残弾の表示が赤くなっており、中身がない事を示していた。


「零発です、隊長の使っている銃は代わらなければそちらも」

「ああ、ゼロだゼロ、どーする?」

「どうすると言われましても、俺からは襲う理由は無いのですが」

「理由ねぇ。例えばあの船長を殺したらどーする」


 クラークの問いかけに無言になるヤマト、自然に隠しもっているナイフへと手が伸びた。すぐにのん気なクラークの声が飛んでくる。


「冗談だ冗談。そんなに殺気立つな、この狭い船でそれを行なうとヤマトよりも先にあの褐色のメイドに殺されそうだからな」

「メイドですか……」

「ああ。さっきもな、ちょっと様子見していたんだが。あの船長を守るように立ち位置を変えてた、お蔭でやり難いったらありゃしないぜ……」

「で。ターゲットを俺に変えたわけですか」

「だったんだが、それも諦めた、この場は引き上げる積もりだ」


 二人の間にしばしの沈黙が流れる。


「おいおい。信じてくれよ」

「先に頭を出すなと教えられましたので」

「ったく、しゃーないな。オレが先に頭をだす。それでいいか」


 ボロボロのソファーから頭をだして部屋を見渡すクラーク。くっくっくと笑っている。

 一方護身用のナイフを手にしたヤマトがクラークに狙いを定めたままゆっくりと立ち上がった。

 両手を前にだして白旗を出すクラーク。


「さて。本題を言おうか」

「やっとですか」

「そういうな。この惨状で言うがお前たち、今度のレースに出たら今度こそ命の保障はないぞ、さて帰るぞ」


 逃げるように廊下にでるクラーク、ヤマトはそれを黙って見つめていた。

 部屋の中を見回すとボロボロの床に傷の付いた壁、壊れたソファーに散乱したガラスや陶器類。

 途方にくれていると自動ドアが開く、息を切らしてカルメンが入ってきた。


「ヤ、ヤマト様」

「なんだ」


 溜息を付いて一息吐くカルメン。


「大丈夫だったのですね。先ほどの自称ヤマト様の叔父がドックから出て行くのが確認されましたので、急いで見に来たのです」

「ふむ」

「ふむ。じゃありません。なんですか、この部屋の中は……」


 銃撃戦をしてましたとは言えず、腕を組み仏頂面のままのヤマト。先ほどとは違い付かれたほうの溜息を付くカルメン。


「わかりました。取りあえずお嬢様には後で報告するとして、片付けをしましょう。そして説明してもらいます、お嬢様と何を隠して居たのかを」


 あらかた片付けを終わった後にカルメンが三度目の溜息を付く。ヤマトの説明をされて何か言おうかと口を開くと扉が開く。

 トレイを片手に元気良くカグラが入ってきた。 


「御茶菓子もってきたよーって……あれ? 二人ともどうしたの? それに部屋の中すっからかんだけど……」

「お嬢様、お話があります。夕食後に全員集まるように言っておいて下さい」

「う、うん。あれ、カルメン何か怒ってる……?」

「どうでしょう。では、わたしは残っている仕事がありますので失礼します」


 ドアの外を出てカツカツと靴を鳴らして去っていくカルメン。

 残ったカグラは不思議そうな顔をしている。


「カグラ、来ないだの問題がばれた」

「え? 此間って何かしたっけ? 深夜にケーキ食べた事かしら、それとも向日葵ちゃんのカップを割った事かしら……」

「ちがう。オレとカグラが月面ドックに忍び込んだ事だ」

「えっえ? 何で何で、あっもしかしてこの部屋がこんなのも関係あったりする」

「ああ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ