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九十話 このタイプは初めてです 2

 魔法を使う魔物。厳密に言えば、カーネル大佐は魔物ではないでしょう。魔法を使うゴーレムなんて、聞いたことがありませんし。だからと言ってなんなのかと訊かれても答えられませんが。


 そのことに驚いているうちに、カーネル大佐の詠唱は完成してしまいました。


『ライトニングスピア!!』


「水よ!!」


 とっさに周囲の水を集め、盾を作ります。どうにか間に合い、雷でできた槍を防ぐことに成功しました。


「え、なにが、っていうか水タイプに電気タイプ効果抜群じゃないッスか!?」


 後ろで見ていたルナちゃんがそこにツッコんで来ますが、今は相手をしていられません。


 水の盾がカーネル大佐の攻撃を防いでいる理由は、盾を構成している水に不純物が一切含まれていないためです。完全な純水で不純物がない状態だと、水は電気を通さないんですよ。ルナちゃんは知らないみたいですが。


 私が最初の一撃を防ぎ切ったことを知ったカーネル大佐は、やはりとてもうれしそうでした。


『ふはは!! 汝、我が宿敵とするにふさわしい技量を持っているな!!』


「お褒めにあずかり光栄ですね。というわけで、ここを通してもらえません?」


 後ろの三人には手で下がっていてほしいと合図を送りながら言うと、カーネル大佐は実に楽しそうにくるりと回って言いました。


『断る!! 我はずっと、強敵と戦うことを夢見ていたのだ!!』


 ずっとて。あなた生まれたの今日でしょうに。


 そんなツッコミが喉まで出かかりましたが、それが言葉になる前に再び詠唱が聞こえて来ます。


『紫電よ閃け。我が命に従い、我が敵を呑み込め!! ライトニングアース!!』


 また厄介な技を!!


 今度は地面を這うようにして、紫に光る雷が襲いかかって来ます。ですが詠唱の途中でどの魔法が来るのか辛うじてわかったため、風の魔法で全員を地面に接触しないよう浮かせることで回避しました。


「ていうかあなた、どうして魔法が使えるんです!?」


 しかも、昔考えたなかでも偉そうな部類である『我が~』とか、『汝の~』とか言っちゃうタイプのやつじゃないですか!! いえでも、あれよりはマシですけど。うっかりわかりもしない漢文調で作っちゃったやつとか、記憶にある限りのスペイン語とかフランス語とかふんだんに使っちゃったやつとかよりは。


 それでも、かなり恥ずかしいことに変わりないです。なので即刻やめていただきたいんですけど!!


 カーネル大佐はニヤニヤとした笑みを浮かべると、サラリと答えました。


『簡単だ。我が創造主、ナノさまたちに聞いたのだ』


「ナーノーさーんーたーちぃ!?」


 余計なことを! ホント余計なことを!! しかも様づけですよ!!


『ふはは、我は最強になるべくして生み出された。魔法くらい、使えて当然なのだ!!』


「もうホントそういうのいいんで、通してもらえません? 私、忙しいんですよ。というか早くシルフさんを助けに行きたいんです。戦いたいなら、今度相手してあげますから」


 後で時間のある時にできないかと思いそう言ってみたのですが、カーネル大佐は不敵に高らかな哄笑をあげたではないですか。


『そんなこと、我の知ったことではないわぁ!! 戦うなら今、今しかないのだ!! 風よ集え。我が命に従い暴風となりて吹き荒べ!! サイクロン!!』


「ちょっ、密室でなんて技使ってるんです!?」


 その名の通り、台風のごとき暴風雨を生み出す凶悪な技なんですけど!? こんなところで使ったら建物ごと吹っ飛びかねないじゃないですか!!


 カーネル大佐はすべてを理解し魔法を使っているらしく、段々と渦を巻き始めた風を楽しそうに見ていました。鼻歌でも歌いそうな笑顔ですが、さすがと言うべきなのか魔法の制御がまったく乱れていません。


 このまま放置すれば、最悪外にまで被害が――

「いい加減にしてくださいっ!!」


 バヅンッと電気がショートしたような音が鳴り響いた、次の瞬間。カーネル大佐の周りで渦を巻いていた風が、ウソのように消え去っていました。初めてやりますが、どうやら上手く行ったみたいです。


『な、なにをした……!? 汝、何者なのだ!?』


 大技を無効化されたショックで目を見開き固まるカーネル大佐は、くちびるを震わせて私を見ていました。


「なにを、と言うのであれば、魔法を無効化したんです、と答えるのが正しいでしょうね」


『どうやって!? 今の魔法は、我が扱うなかでも最上位に威力も制御の難易度も高いものだぞ!? ただ魔法の構築を邪魔しただけでは、魔力が暴走して大変なことになるはずだ!!』


 あら、この方思っていたよりも魔法に詳しいです。感覚ではなく、ちゃんと理屈を理解して魔法を使ってるんですね……もしかすると、私より理論方面は詳しいかもしれません。


 別に律儀に答えなくてもいいのでしょうが、なんとなくカーネル大佐には答えた方がいいような気がしたので、正直に答えました。


「あなたが使った魔法の、逆位相の力をぶつけたんです。あなたの使った魔法は強力なプラスの力でしたから、私はマイナスの力を使って相殺したんですよ」


 なんとなくの勘で使ったうえに、あんなに派手な音がするとは思わなかったってのはナイショです。一瞬、ヤバいことになったんじゃないかと心臓が止まりかけました。今の私にあるのかどうかわかりませんが。


 私の説明を聞いたカーネル大佐は、しばらくポカンと口を開けていました。ですがやがてガックリと肩を落とすと、トボトボとどこかへと去って行こうとしています。


「え、どこに行くんです!?」


『我には、修行が足りなかった。そうか、マイナスの力……この世界には、まだ我の知らぬ力があるのだな……いつか我が更に強くなった時に、再戦を申し込ませていただく』


「え? えぇ……?」


 よくわかりませんが、今回は通してくれるってことでいいんですよね……?


『別れの前に、一つ訊きたいことがある』


「え、あっはい。どうぞ」


『汝、名はなんという?』


「私ですか? ミーシャと申します」


『また会おうぞ、ミーシャ』


 そう言うと、今度こそカーネル大佐は完全に姿を消したのでした。アイス屋の方へ行ったのですが、あそこに行ってどうするんでしょうね……?


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