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三十話 正しくは変態です

 シルフさんがプレゼントを選んだ翌日。フィーマさんが起きたころを狙って家まで行こうと思ってたのですが、シルフさんがまだなにか悩んでいる様子だったので後回しにしました。たぶん、なんて言って渡そうかを悩んでいるのでしょう。 


 その時でした。フィーマさん本人が、なぜか頭まですっぽりとフードで覆った格好でやって来たのです。それに気づいたシルフさんは、慌てた様子で持っていた可愛らしい包みを隠しに姿を消しました。


「おはようございます、フィーマさん。今日は妙な格好をしていらっしゃいますね」


 私がそう声をかけると、うつむきがちのフィーマさんはどうしてか泣きそうな声を出しました。


「お、おはようございますミーシャ様……あ、あの、その、実は本日ご相談がございましてですね……」


「相談、ですか?」


 なんでしょう? 嫌な予感しかしませんが……


「あ、あの、説明が難しくてですね……えと、その……これを見ていただくのが早いと思います……」


 フィーマさんは半泣きで被っていたフードを取り払います。


 耳が伸びてました。


「……はい?」


 ゴシゴシと自らの目をこすり、もう一度フィーマさんの耳をよく見てみます。


 ……伸びてますね、耳。


 フィーマさんの耳が、みょいーんと伸びていたのです。横向きに五センチくらいでしょうか。こんな風に耳が長い人を、どこかで見たような……


「……エルフ」


「え?」


 涙目でフィーマさんが訊き返して来ましたが、なんと返せばいいのやら困ってしまいました。


 今のフィーマさんの姿は、異世界系の本によく出て来るエルフそのものだったのです。耳が長くなったその姿は、他に表現を思いつかないくらいまさにエルフでした。


 さて、どう説明したらいいでしょうねこれ……とりあえず、他にも変化がないか訊いてみますか。


「フィーマさん、耳が伸びたのはいつ頃ですか?」


「お、一昨日帰って眠ったあと、起きたらこうなっておりまして……」


「原因に心当たりは?」


「い、いえありません……強いてあるとすれば、あのダンジョンくらいしか……」


 ですよね……タイミングからみて、やっぱりそうなりますよね。


「他に変わったことはありますか?」


 フィーマさんは泣きそうな顔のまま、考える素振りをしました。


「そう、言えば。同じくらいの時から、変な声が聞こえるんです」


「変な声?」


「え、ええ……小さな子供の声で『たのしーなーたのしーなー』とか、『おもしろい人増えたー』とか、そんな声が」


「小さな子供の声?」


 もしかして……


「ナノさんたち、いらっしゃいますか?」


『どーしたのーミーシャ様ー?』


「わっ!? また!?」


 ナノさんたちが返事をした瞬間、フィーマさんがオロオロとした様子で辺りを見回しまくっていました。


 やはりそうですか……


「つかぬことをお訊きしますが、フィーマさんの変化に心当たりはありますか?」


『んー? 知らなーい!』


「あらら?」


 と、言うことは……


「すみません、フィーマさん。ちょっとあなたのこと調べてもいいですか? 体調に影響はしませんから」


 こわごわフィーマさんが頷いたのを確認し、魔法を発動させました。


 そして結果。原因は私でした。


「マジですか……」


「え、え? な、なにがあったんですか!?」


 今にも泣きそうなフィーマさんに、どうしようかと思いましたが、隠してもしかたないので正直に話すことにしました。


「すみません、こうなったのは私のせいみたいで……」


「ど、どういうことですか?」


「その、ですね。一昨日、偶然フィーマさんの体の中に入ってしまいまして……その拍子に、魔法を感知する体の機能を開いちゃったみたいなんです。それでフィーマさんの体が、極めて魔法を使うのに適するように進化してしまったようで……」


 進化は正しくなかったような気がして考えると、正しい表現は変態だということを思い出しました。進化は世代を経るので、こういう突然変異的なのは変態が正しいんですよね。……ええと、これは言わない方がいいですね。


「それでたぶん、エルフ化してしまったのかと。そして聞こえている声はナノという名前の、小さな精霊さんたちです。なんて言いますか、シルフさんやウンディーネさんなんかの部下的な感じの方々ですかね」


 シルフさんたちの話もあまり聞かないので、厳密には部下というのも違うんですけどね。


 私の話を聞き終えたフィーマさんは、困惑した顔をしていましたが涙は止まったようです。なにかしらの病気などではなかったのと、こうなってしまった理由がわかったからでしょう。


「あ、あの。ということは、わたしにも神の御業が使える、と言うことでしょうか」


「魔法のことでしたら、そうですね。使えると思います。ただ、私は理論に則って使っているのではなく適当なので、フィーマさんに使い方を教えるのは難しいと思われます」


 基本的に勘ですからね、魔法の使い方。最初から使えるようにとお願いしたから、使えるんですし。


「……ほ、他になにか変わったことは? 実はその、わたし以外にも同じように耳が伸びる現象が起こっている者がおりまして……」


「え!? フィーマさんだけじゃないんですか!?」


 え、エルフ化って伝染するものなんです!? いえでも、あり得ないですよね……あり得ないなんて、この世界じゃ通じないですよね。こんなこと今更です。


 ただ、この事態はマズいかもですね……突然こんな変化が起これば、混乱した人々がなにをしでかすかわかりません。


「すみませんフィーマさん。ちょっと村を案内してもらえますか?」


 ダンジョンの次は、フィーマさんの住む村を調査せねばならないようですね……


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