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百七十一話 魔法は使えるのでしょうか

 水も食料もいらない人なら、森で一人にして大丈夫か? と問われたら、どう答えるのが正解なのでしょう。


 少なくとも、ここで生きていく分には問題はありません。となると、本人の意思次第でしょうか。


「ダイスさんは、なにか希望とかありますか? 行きたいところとか、やりたいこととか」


『行きたいところと言われましても、僕はこの森以外知りません。出ようとしたのですが、出口がわからないので出られませんでしたから。それに、下あごがどこかに行ったきり見つからなかったですし。下あごだけおいて、森から出られません』


「この森はある意味、ダイスさんには一番安全なところかもしれませんね……」


 一か月もここにいて無事ということは、この森が合っているんでしょう。下手にここから出ると、人間に出会って攻撃されかねません。見た目は魔物ですし、夜の森に骸骨なんて出たらたいていの人は逃げるか攻撃するかです。


 私も灯りもなくここに来てダイスさんと遭遇していたら、とっさに攻撃していた恐れがあります。もしくは、ビックリして腰を抜かすか。どっちみち、友好的な態度でないことだけは確かです。


「ではこのまま、この森で暮らしますか? ただその場合、人間に見つかると厄介なので今まで以上に隠れ住むことになってしまうでしょうが……」


『できれば、一人でない方がいいです。ずっと一人でいるのは、寂しいですから』


「ですよね……」


 私も昔、ずいぶんと長いこと一人の時間がありました。あれはかなり堪えましたからね……少しくらいなら一人の時間も欲しいですが、ずっと一人というのは案外厳しいものです。


 現在のように、一人の時間がほぼゼロというのもあれですけど。この件が片付いたら、誰も来ないところに行って一人の時間を過ごしましょう。と言っても、近所を散歩するくらいが関の山でしょうけど。


 他に希望を訊いてみると、ダイスさんは少し考えたこんなことを尋ねて来ました。


『あと、僕は魔法というものは覚えることができるのでしょうか?』


「魔法、ですか。さっき調べた限りだと、使うのに問題はなさそうです。というか、むしろ普通の人よりも魔力量は多いくらいですよ」


 ただダイスさんの場合、どこでマナを作ってどこに溜めているんだろうという疑問は湧いて来ます。普通は心臓なのですが、ダイスさんにはないですし……さらにマナは、心臓から血液を介して全身に広がります。ダイスさんはそれもできないわけで……


 その辺のところは魔法で見るのがとても困難でした。昔あったVHSの録画をテレビで見ているような、ノイズがヒドイのかそもそも何の映像もないのかわからない状態なのです。


 これ以上調べるとなると、相当時間をかける必要が出て来ます。ダイスさんがどこでマナを扱っているかがわからなかったとしても、これからの生活に支障はないので今回はここでストップです。


 ダイスさんは私の言葉に、ホッとしたようなリアクションを見せました。


『よかったです。なら、さっそく使いたい魔法があるのですが。教えていただいてもよろしいですか?』


「ええ、私に教えられるものであれば」


 というか、呪文を覚えているものであれば。ダイスさんが呪文なしに魔法を使えるなら必要ありませんが、そんな人は今のところ会ったことが……あれ、どうしましょう。そもそもダイスさん、しゃべれません。声帯ないので。じゃあ、どうやって魔法を発動させれば……?


『では、しゃべれるようになる魔法、というものは存在しますか?』


「しゃべれるようになる魔法、ですか?」


 作りましたっけ、そんな魔法……?


 考えてみましたが、記憶にありません。おそらく作ってないのでしょう。まあ私本人がしゃべれますから、そういう系統の魔法を作る理由がないです。だから作ってないと考える方が自然ですね。


 ならこれから作ればいいわけですが、ならいっそ私がダイスさんに魔法をかけた方が手っ取り早いのでは?


 そんなわけで、実行しました。念じれば魔法自体は発動しますが、それだと私がいないところでダイスさんは魔法を使えません。もしも効果が切れた時に、とても不便な思いをすることでしょう。


 というわけで、今回は呪文を唱えるタイプではなく、魔法陣を描いて発動させるタイプの魔法を作ることにしました。ナノさんたちは呪文を一言一句覚えられるんですから、描かれた図形を覚えることも可能なはずです。


 あまり複雑してもこっちが覚えていられないですし、今後他の方も使うことがあるかもしれません。そうなると、ある程度簡単、かつ他に作っても被らないものが望ましいです。いっそ適当に作っても問題はないんですが、まあそこは気分の問題もあります。


 最終的に完成した魔法陣は、シンプルに六芒星を使ったものにしました。ただの六芒星だけだと後で他の魔法陣作ることになった時に大変なので、一応方角や角度なんかも念頭に入れて作ったので大丈夫でしょう。


 本当なら、天使の名前とかヘブライ語とか使いたかったんですが……その辺の知識は私の頭に中にあるもので限界なので、あきらめました。辞書があればもうちょいマシなのができたんですが……うーむ、無念です。


「いいですか、ダイスさん。これと同じものを角度と方角に気を付けて描いてください。周りの模様もですよ。描き終わったら、この魔法陣に祈りを捧げてくださいね。それでしゃべれるようになるはずです」


『わかりました、やってみます』


 そう言うと、ダイスさんはいともたやすく魔法陣を描くではないですか。そうして描き終えてものの数秒で、魔法陣が光り出し――

「あ、あー……あ、しゃべれる! すげえパネェ!? なにこれ魔法!? いやマジ魔法か、とにかくすげえ!!」


 はしゃぎすぎたのか文章の時とはまったく違う雰囲気のしゃべり方をするダイスさんが、嬉しそうにそんな声をあげました。


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