百六十七話 村以外にも気を配らねばなりません
なんやかんやの話し合いの末、ルナちゃんがスーフィさんの家で晩御飯をご馳走になっている間に、私たちは明日以降の相談を始めました。
「この様子ですと、ドリアードさんが仕事を終えるまでにはみなさんある程度魔法のコントロールができるようになってるでしょう。その間は私たちで問題が起きないか監督するということで、大丈夫ですか?」
そうシルフさんに尋ねた瞬間、シルフさんの目がキラリーンと輝きまにした。
「お任せください!ミーシャ様から賜った任務、完璧にやり遂げてみせますとも!」
「いえあの、そこまで気張らなくていいんですが……普通に、問題が起きないかどうかだけ見ててください。警報もつけましたし」
その警報が鳴った時に対処できる人が必要なので言っているのですが、色々大丈夫でしょうか……
『わたしたちも、ガンバるのですー!』
「ナノさんたちは……やりすぎないように気をつけてください。誰かが強力な魔法を使おうとかしたら、止めてくださいね?」
『強力?強力って、どれくらいが強力なのです?』
「うーん……そうですね、術者本人にダメージが来たりとか、結界に深刻な被害のおよびそうな魔法ですかね」
『りょーかいなのですー!』
こう言っておけば、本気でマズい時は止めてくれるでしょう。ナノさんたちにはそれができます。やろうと思えば、この世界の全人類から完全に魔法を取り上げることも可能なはずですし。
これで明日以降の算段は完了です。ただ、まだ問題が全て片付いたわけではありません。
「寝床、どうしましょう……」
私は毎晩ではなく五十年サイクルで寝ているのでいいのですが、ルナちゃんやシルフさんはそうもいきません。特に、ルナちゃんの方は。
ナノさんたちは眠るかどうかよくわかりませんし、サイズの問題で場所も取らないので大丈夫でしょう。とりあえずは、先に隣にいるシルフさんの方に訊いてみましょうか。
「シルフさんは、今日どこで寝ます?」
「わたくしであれば、三日程度眠らなくても問題ありません。ですので、ミーシャ様のお手を煩わせることは……」
「ムリはしないでいいんですよ?寝不足でパフォーマンス落ちる方が、よっぽど問題なので」
そう言うと、シルフさんは少し困ったような顔になりました。
「たしかにわたくしたち精霊も眠る必要自体はありますが、人間よりも睡眠欲はないですしサイクルも長いのです。わたくしは特に睡眠の必要がないらしく、現在一ヶ月程度であれば眠らずとも活動できます」
「そうなんですか?」
「ええ、昔はもう少し眠る必要がありました。ですが最近、理由はわかりませんが身体の調子がとても良いのです。そのせいか、活動時間がいささか伸びまして」
「調子がいいのなら、いいんですが……」
調子が良い、というのが少々気になります。いえ悪いよりは全然いいのですが、なんとなく引っかかって……今度、その辺注意しておきましょう。なにかあったらいけませんし。
密かにそう決意した時、満足そうな顔をしたルナちゃんが帰って来ました。よほど晩御飯が美味しかったのでしょう。先ほど説明された、一角魚は気に入ったんですかね?私も味に興味あったんですが……機会があれば、ルナちゃんに身体借りましょう。
「センパイセンパイ、戻ったッス!!」
「おかえりなさい。それでルナちゃん、今日の寝床の話なのですが……」
「なんか、近所でおかしな気配がするって話を聞いたッス!!」
「……はい?」
唐突すぎてビックリしましたが、なにやら不穏な話っぽいです。
「その話、詳しく聞いてもいいですか?」
「りょーかいッス。なんかよくわかんないんスけど、すぐ近くの森でたまに変な気配があるらしいんス。ただそれ、冬眠する前なんで今はわかんないそうッス」
また微妙な話ですね……なにかあるなら、行った方がいいのは間違いないです。今はいないかもしれませんが、確認は必須でしょう。
「ではルナちゃんはどこかで適当に寝てもらうとして、私とシルフさんの二人で確かめて来ます」
「えー、あたしも行きたいッス!!」
「言いたいことは色々ありますが、一番重要なところだけ訊きますね。ルナちゃんあなた、夜中起きていられるんですか?ほぼ徹夜になると思いますけど」
「行ってらっしゃっいッス!!」
「手のひら返すの早いですね……」
森にある気配うんぬんよりも、睡眠欲が優先されるようです。まあ、私としてはルナちゃんの面倒見なくていいので楽ですけど。
「ちなみに寝床って地力でどうにかなりますか?」
「大丈夫ッス、スーちゃんちに泊まるッス!」
「なんかいつの間にか仲良くなってますね……」
よくあの子と会話できますね。変人同士気が合うんでしょうか。可能性としては、ルナちゃんのテンションをスーフィさんは気にしないので上手くいくとか、そんな感じだと思いますけど。
「じゃあ私たちは二人で確かめて来ますから、くれぐれも迷惑かけないようにしてくださいね」
「はいッス!!」
いつもの通り、返事はいいんですけどねぇ……
夜なので大人しく寝てくれるといいなと思いながら、私たちは二人で森へと向かったのでした。




