百三十話 ちょうどいい罰って難しいです
魔法で反撃して来たジャブネでしたが、まともに発動することなく魔法は消えました。どうやら魔法の素養はティストアさん以下のようですね。ティストアさんは眠りの魔法使ってましたけど、感じとしてはかなり強い力でした。ですがこの人は、その半分もあればいい方でしょう。
さて、当のジャブネの処遇ですが。本気でどうしましょう。この世界の警察組織がどうなってるのかよくわかりませんけど、貴族を捕まるのって大変そうだということはわかります。だからと言って私が勝手なことをしていいのかというと、それはそれで疑問ですし……
と、そこでジャブネに向かって殺気を向ける方が。
「ミーシャよ、なにもせぬと言うのであれば我が手を下すぞ」
「それはやめてほしいと、先ほどお願いしたじゃないですか」
「だがそやつ、反省の色がまるでないぞ。であれば、少々手荒なことをしたとて問題はあるまい」
「それはそうかもしれませんけど……あなたに任せると、多少じゃ済まないんですもの。最悪、原型がなくなることを想定しなくちゃならなくなるじゃないですか」
ヒィッと、微かにうめき声が聞こえました。私たちの会話が聞こえていたようで、大佐のセリフに怯えているようです。あ、でもどっちかっていうと私を見ているので、犯人私かもですね。
やっぱり大佐がジャブネを許せないようで、完全に怒ってます。このまま放っておけば、本気で首落としかねません。
「シルフさん、なにかいい方法ないですかね?」
「ミーシャ様、わたくしとしましては今回に限りカーネルの案を推したいと思います」
「し、シルフさんまで!?」
冗談……ではないですね目がマジです。どうやら、私に向けて魔法を使ったことにかなりご立腹のようで……
「あのシルフさん、私は別にその点は気にしていないので――」
「おい小娘、今の我の名はドゥームだ! そこは間違えてくれるでないぞ!」
「話をややこしくしないでください!!」
改名したのにまったく名前を呼んでもらえない大佐が、ここぞとばかりにそんな主張をし始めました。確かに改名したとは聞きましたが、今さら名前変えられてもしっくりこないのであなたは大佐でいいんですよ。
シルフさんも似たようなことを思ったようで、怒りながら呆れていました。
「そんなことはどうでもよいだろう! 今はもっと重要な案件があるはずだ!!」
「なにを言っている重要なことだ!! 人の名前を間違えるなど、人として恥ずべきことだと思わぬのか!!」
なぜここでケンカを。あなた方、今珍しく意見が一致してるんですよ? なら仲良くしてくださいよ……!! あとあなたに人間うんぬん説かれるのも癪ですし、そもそも大佐もシルフさんも人間カテゴリに入りませんよ。元ゴーレムと精霊です。と言ったところで、大佐が聞くとは思えませんよね……
私がどうしようか悩んでいるうちに、二人の言い争いはヒートアップしていました。
「貴様に言われたくないわ!! 散々事態を引っ掻き回しておいて、その言い草はなんだ!!」
「それとこれは別問題であろう!! 汝のような小娘に言われとうない!!」
「ならば貴様も小娘呼ばわりはやめろ! 自ら実行する気もないのであれば、その意見が通ることはないと思え!」
シルフさんがそう言った途端、大佐の勢いがわずかに落ちました。
「……汝、なんという名であったか」
「そこからなのか!? シルフだ!!」
「よかろう。シルフだな、覚えたぞ!!」
いえあの、あなた方今そんな話している場合じゃないので……
もうこの二人のことはさておくとして、ジャブネの処遇を決めてしまいましょうか。
「ええと、ジャブネ。あなたが反省するのであれば、ちょっとしたお仕事を引き受けてくれればそれでよしとしますよ。今回だけ特別です。次はありませんので、そこのところは覚悟してくださいね」
この人に対する罰も重要ですが、子供たちを放り出すわけにもいきません。それを考えると、あまり厳しい罰を下せないという事情があります。それを鑑みても、今思いついた罰はちょうどよいと言えるでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇
数日後。もう一度ジャブネ家を訪ねてみると、そこはまったく違う建物と化していました。
一言で言えば、そう。メイド喫茶です。
「おかえりなさいませ、ご主人様!!」
「おかえりだにゃーん!」
あちこちで、そんな声が聞こえて来ます。ここで働いているのは、今度は本人たちの希望で働いている子たち。それから、奥のキッチンでひたすら皿を洗う影が一つ。
「ジャブネさまー、こっちのお皿もお願いするにゃーん」
「ジャブネさま、もうお皿ないのです早くしてほしいのです」
「ジャブネ様、洗剤使い過ぎですよ!」
「は、はいはいはいただいまー!!」
半獣人の子たちにこき使われているのは、ほぼタダ働き状態のあのジャブネです。
あのあと話し合いの結果、ジャブネが全額出資しメイド喫茶を立ち上げさせました。そして希望者にはここで働いてもらうことにし、さらにメイドとして働かせられていた子たちの苦労を知れということで、しばらくの間強制労働してもらうことにしました。
ついでにこの喫茶店で得た収入は、この町をよりよくすることに投資してもらうことに。
一応、ジャブネについてはこれで一件落着となりました。まだ片付けなければならない件が残っていますが……大佐とか大佐とか大佐とか。




