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百二十九話 貴族ってみんなこんなもんなんですかね?

 ぴゃあ、とかきゃあとか、そんな悲鳴が響きました。見かけによらず、かわいらしい悲鳴です。まあどんな悲鳴をあげようと、これから起こる事象には関係ないんですけどね。


「な、なななんだお前たちは!! 私の屋敷でなにをぐえっ!?」


 突然奇声をあげたジャブネがイスから転げ落ちて、床にベチャリと叩き付けられました。そしてそのまま、一切動かなくなりました。まあ、動かないのではなく動けないのでしょうが。


「あまり大声を出すのはやめてくださいな。子供たちが怯えるじゃないですか」


 風の魔法を応用して、ジャブネを地面に叩き付け固定させていただきました。ちょっと制御が面倒なので、今度もっと簡単に拘束できる魔法を作るとしましょう。私が作った魔法って属性系の魔法が多いので、こういう密室で使えるものってあまりないんですよ。


 さて、誘拐犯を捕えたのはいいんですが。周りにいた子供たちが、唐突に現れた私たちを見てとても怯えたように見えます。ふむ、さすがに現れ方が悪かったですかね。


「ええと、ジャブネと言いましたね? 私がここに来た理由、わかります?」


「な、ぁぐあ……」


「ああすみません。ちょっと押さえつける力が強かったですね。こういうのって、思いっきり出力をあげる方が楽で、つい」


 ちょっぴり力をゆるめると、ジャブネはホッと息を吐きました。


「あ、あなたたちはいったい何者なの!? なぜ私の屋敷に入って来られている!?」


「それはまあ、魔法とかを駆使してです」


「そんなバカな……!? ここには私が特製の結界を張ったのよ!? 私よりも魔法の才能がない限り、突破できないものばかりだというのに!?」


「え? そんなの張ってありました?」


 後ろにいる人たちに訊いてみましたが、全員首をかしげていました。


「すみません、誰も気づきませんでした」


「ど、どういうことなの……!?」


 ふむ、この様子を見る限り、本当に結界はあったのでしょう。ですが誰も気づかなかったうえに魔法が苦手なルナちゃんにも影響がなかったということは、おそらく私か大佐辺りが結界に触れた瞬間に、魔力過多で消し飛んだのかと。


 ジャブネはひたすら驚いていましたが、それは後にしてもらいましょう。


「話を戻しますが、私たちはあなたがあちこちで誘拐を繰り返す誘拐犯と聞き、真相をたしかめに来たのですが……この様子だと、あなたの弁明を聞くまでもなさそうですね」


 証拠ありまくりですからね……未成年略取という、立派な犯罪の証拠が。


 動揺するジャブネはさておき、先に大事なことを確認しますか。


「ティストアさん、ティムキアちゃんは大丈夫ですか?」


 私がジャブネを相手にしている間に、ティストアさんはコッソリとティムキアちゃんのそばまで行っていました。


 ティムキアちゃんはティストアさんそっくりな、犬耳としっぽをもつかわいらしい子供でした。並んでみるととても似ていますが、雰囲気がだいぶ違いますね。ティストアさんはどことなく儚い感じですが、ティムキアちゃんはボーイッシュなタイプです。


「え、ええ。ですが、妹が少々言いたいことといいますか、ここであったことで話したいことがあるらしく……」


「と、言うと?」


 視線を投げかけると、ビクッと少し怯えた様子を見せたティムキアちゃんでしたが、おずおずとこう切り出しました。


「あ、あの、ジャブネ様はそこまで悪い人ではないって言うか、その、いいところが全然なかったわけじゃなくって、えと……」


「それはこの人にムリヤリ言わされてるわけじゃないんですか?」


「ち、違くてです……ジャブネ様、そのうち必ず帰してくれて、しかもお金いっぱいくれてたから、です」


「本当ですか?」


 まだ転がったままのジャブネに訊いてみますと、うなずこうとして失敗したのかくぐもった声で言いました。


「ほ、本当です!! 私が興味あるのは十歳未満で、十歳超えたらどうでもいいので!!」


「それは自慢できることじゃないですが、ここまで真性のロリコン初めて見ましたよ。逆に感心します」


 要するに、十歳になるまでの間ここに強引に連れて来てこうしてメイドの格好をさせて働かせていたようです。


 一応他の子にも事情聴取をしてみましたが、全員言っていることは同じでした。実際十歳になっていなくなった子と、知り合いの子もいました。


「ですが犯罪ですからね、これ」


 いくら本人の了承があったとしても連れて来方がアウトですし、そもそも子供を働かせるのもダメです。多少は仕方ない部分もありますが、どう考えてもダメでしょう。そもそも誘拐のうえ監禁ですし。


「いくら本人たちがよくても、あなたがやったことは犯罪なんです」


「わ、私はただ小さな女の子が好きなだけで!! いいじゃない別に!! 給料もあげているのよ!? なにが不満なの!?」


「いえですから、ムリヤリ連れて来ちゃダメなんですって。しかも子供相手にこういう働かせ方をするのは、更にアウトです」


「じゃあ給料を上げるわ、倍もあればいい!?」


「ですからそういう問題じゃないんですって」


「いいじゃないの本人たちがいいって言ってるんだからああ!!」


 そう言った瞬間、ジャブネからかなりの量の魔力がほとばしり、部屋全体に向けて風の刃が――

「ムダですよ」


 魔法は発動せず、後に残ったのは顔面蒼白で固まるジャブネのみ。


「さて、どうしてくれましょうね……?」


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