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百四話 宇宙人にさらわれたのでしょうか 3

 シルフさんの閉じ込められたUFOキャッチャーのゲームをどうにかしようと何度かチャレンジしてみたのですが、なかなかうまくいきません。


「センパイ、これは機械が悪いッス!!」


「いえあの、私たちの腕の問題では?」


「そんなことないッスよ!! だってこれ、スティックでやるタイプじゃないッスか。あたしが得意なやつは、ボタンしかないやつッス!!」


「UFOキャッチャーあんまりやらなかったので違いとかよくわかりませんが……それは運が悪かったとしか」


 ルナちゃん曰く、どうやらたいていのUFOキャッチャーはスティックで自由に動けたりしないんだとか。どちらかと言えば縦と横だけのボタンが多く、こういうタイプはあまりやらなかったらしいです。


 とは言うものの、私としてはこっちの方が難易度低いんじゃないかとすら思うわけですよ。微妙な調整もできるわけですし。なのでルナちゃんが言っていることは、ただの言い訳じゃないでしょうか。


 そうは思いましたが、本人には言わないでおきました。絶対拗ねますし。


「とりあえずもっかい私がやってみますけど……」


 話しているだけではシルフさんが救出できませんから、何度も挑戦するしかありません。


 そんなわけで数回挑戦しましたが、一度としてまともにいいところで止まったことはありませんでした。


「これは……思ったより難しいですね」


 音ゲーだと連コインなんてザラでしたが、UFOキャッチャーを連続でやったことなかったです。一回やってダメなら諦めますし。これはさぞかしゲーセンも儲かっていたことでしょう。景品を取ろうとすれば、そうそう一回で取れるわけありませんから。


 意外とゲーセンってあくどい商売だったのではと思っていると、くいくいっと袖が引っ張られました。


「あ、あのミーシャ様。しょーせーがやってみてもよいでありますか?」


「どうぞどうぞ。そしてできることならクリアしてください」


 私とルナちゃんという経験者コンビが撃沈したんですから、もうあとは残りの二人に賭けるしかありません。クロノスくんは案外器用ですから、きっとどうにかなると思うんです。


「えっと、こっちをちょーせつして、ここをこーすれば……」


 なにやらブツブツ言いながらUFOキャッチャーをプレイするクロノスくんは、見ててほっこりします。これがシルフさんが捕まってる状況じゃなければ、もっと和むんですが……


 そんなことを思っていると、位置が決まったのかウィーンとアームが下降を始めました。


 スルスルと音もなく降りて行ったアームは、座るシルフさんの肩をかすめていきました。


「おしいです!!」


 かするのも初めてですよ!! やはりこのままクロノスくんに任せるべきでしょうか。


「うう、これむずしいであります……」


「大丈夫です。これまでで一番いいとこ行きましたよ!! この調子でしたら、少し練習をすればきっと――」

「ミーシャ様、この箱様子がおかしいです!!」


 シルフさんの緊迫した声に慌ててそちらを見れば、本来取り出し口であるはずの穴がなぜか真っ黒になっていました。そう、まるで。ブラックホールにでもなったかのような……


「いえまさか、そんなものが……!!」


「ミーシャ様、わずかずつではありますが確実に吸い込まれていますっ!!」


「ってことはやはりブラックホール……!? このままだと、シルフさんが呑み込まれるかもってことですか!?」


「いえ、わたくし本体が吸い込まれているわけではなく……吸い込まれているのはマナです!!」


「マナが……?」


 マナ。生命の源であり、魔力の素でもあるエネルギーの一種。どこまで正しいかはわかりませんが、これが私が認識しているマナです。そんなものが吸い取られているということは、放っておけばシルフさんは衰弱してしますのでは……!?


 しかも、シルフさんは精霊。つまり人間よりも遥かにマナに近い存在です。ならこのまま放置すれば、最悪死んでしまうことだってあり得なくは……!!


「ど、どうするんスか!?」


「一刻も早く救助しないとマズいです。ただ、どうすればいいのかが……!!」


 ここは筐体を破壊すべきでしょうか。いえ、それではシルフさんを傷つけかねません。威力の調節云々もありますが、今これを壊したらなにが起こるのか全く読めないのが怖いです。


 あと考えられるのは正攻法。どうにかしてシルフさんを吊り上げることですが、それができるならとっくにやってる次第で。時間があればクロノスくんがやってくれたかもしれませんが、その時間がないのです。


「……クロノスくん、この吸い込みだけ、どれくらい止めていられますか?」


「これじたいは生きてないでありますから、おそらく一分くらいだとおもうであります」


「一分……」


 クロノスくんが時間を止めている間は、操作なんてできないでしょう。ならば私がどうにかするしかありません。


「クロノスくん、本気でやばくなったら時間停止をお願いします」


「りょーかいであります!!」


「ルナちゃんとウィルちゃんは、なにかあった時のためにそこで待機してください」


「わかったッス!!」


「わかったですの!!」


 三人がうなずくのを確認してから、私は魔力を機械へ込めました。


 ウィンウィンと音を立てて動くアームをしっかり見つめ、細心の注意を払って位置を調整します。チャンスは一回。あっても二回。今決めないと、本当に時間切れになるかもしれません。つまり、失敗はできないというわけです。


 やたらと遅く見えるアームが、下へと降りて行きます。この時点でもうクロノスくんは時間に干渉しています。ならこれがラストチャンスなのでしょう。


 私たちが見守る中で、アームは微妙にシルフさんとは離れた位置へと動こうと――

「シルフさん、今ですそれを掴んでください!!」


 気が付けばそんなことを叫んでいて。次の瞬間シルフさんが苦しそうにしながらもアームへ手を伸ばすと、UFOキャッチャーの下の部分からは大量の白い光が――


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