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百一話 かくれんぼするには広すぎます

 どこかもわからない広大な土地に潜む、小さな子供一人を見つけ出せ。


「なんてムリゲーですかそれ……」


 考えただけでもげんなりするんですけども。ああでも、正確に言えば小さな子供じゃなくなってる可能性もありますね。ルナちゃんが巨大化してクロノスくんが成長していたんですから、ウィルちゃんもどっちかになっていることはありえます。


 そしてこれだけ探しても見つからないのであれば巨大化ではないでしょうから、ありえても成長の方でしょう。


「ルナちゃんクロノスくん。この場所がどれくらい広いかってわかります?」


 私が回っていないところも行っていそうな二人に訊いてみたところ、ルナちゃんの返答はこうでした。


「少なくとも、クラスメイトの家よりは広いッス!!」


「その基準だとまったくわからないです」


 ていうか、個人でこれだけの土地持つのって、日本じゃほぼ不可能だと思いますよ。山手線を個人で全部買い占めるようなレベルですから。資産がいくらあっても足りないかと。


 全然参考にならないですねぇ……まあ、最初からさして期待してませんでしたが。


「しょーせーが知るかぎりだと、ミーシャ様のほんたいから、ウィルの姉さんがいるところまでくらいまでのようであります」


「新幹線どころか飛行機使ってもおかしくないレベルなんですか!?」


 ひろっ!? どんだけ広いんですか!? 普通に遠いんですけど!! え、ていうかそれだと――


「あの、クロノスくん。なぜあなたはそれを知っているんですか?」


 さすがにそんな遠くから来ているわけがないのに、なぜ知っているんでしょう。


「しょーせーがいたところに、そんなことが書いてあったであります。でもちずはなかったので、くわしいばしょとかはわからないであります……」


「広さがわかっただけでもありがたいですよ」


 その広さがとんでもなさすぎて、げんなり度が更にアップしましたけど。というかそんな広さの中から人一人探せとか、どんな無茶ぶりですか。


「センパイセンパイ、きっとあれッス。センパイならなんやかんやであっという間に見つけられるッスよ!! というわけで、今ここで新しい力に目覚めるッス!!」


「いえあのルナちゃん? その信頼は嬉しいのですけど、相当な無茶言ってますからね?」


「えー、でもセンパイならどうにかできそうな気がするじゃないッスか。ねークロくん」


「た、たしかにミーシャ様であればどんなことでもできるとおもうであります!!」


「そんなにキラキラしたまなざしで見つめられても、すっごく困るんですけど……」


 やたらめったら期待されてるんですけども。いやまあ、不可能ではないと思いますけど……うーん、こういう時どんな魔法使えば……人捜し……


「ルナちゃんとクロノスくんに魔力がまったくなかったら、可能かもしれない方法はありますけど……二人は自力で魔力反応って、消せないですよね?」


「え、あたしなんか邪魔になってるッスか!?」

「しょーせーもでありますか!?」


 言葉のチョイスを間違えました。今のだと、確かに二人のせいで見つからないみたいなニュアンスになってしまいました。


「あ、いえ決して邪魔とかではなくてですね……ごめんなさい謝るので泣かないでもらえますか!?」


 二人とも涙目になっていました。クロノスくんはともかく、ルナちゃんまで泣くことないじゃないですか。それに、ルナちゃんは魔力反応が薄いので、いてもどうにかなりますし!!


 とそこまで思いかけて、これを正直に言ったら今度こそクロノスくんが本気で泣き出してしまう恐れが出て来たので口をつぐみました。危ないところでしたよ、別に私は二人を泣かせたいわけではないのです。


 仕方がないので、妥協案を採用することにします。これやるとちょっぴり疲れるので、あんまりやりたくなかったのですが。諦めるしかなさそうです。


「よしじゃあこうしましょう。二人共、今からちょっと結界張るので、その中にいてください」


「あいあいさーッス!!」


「りょーかいであります!!」


 私のお願いに二人は二つ返事で了承してくれたので、アッサリと準備は済みました。


「さて、あとは私次第なのですが……」


 目を閉じて、この世界に存在する魔力に意識を集中させます。これだけだと、あまり広い範囲のことはわかりません。せいぜい目視範囲くらいが限界です。なので、目以外に頼るのです。この場合は、聴覚ですかね。


 魔力をゆっくりと練り上げ、なるべく広い範囲に浸透させます。少しずつその範囲を広げて行くと、なにがしかの反応があった場所が――

「見つけましたよ!! って、え?」


 認識を限界まで広げ、魔力の反応を探した結果。ウィルちゃんの魔力は、とても近くにあることが判明したのです。本当に近く、それこそ手の届く距離に。


「ふ、二人とも!! どっかにウィルちゃん見えないですか!?」


 慌てて結界内の二人に尋ねますが、二人とも周囲を見回すと首を横に振りました。二人からも、ウィルちゃんの姿は見えないようです。


「おかしいです……こんなに近くに反応があるんですよ? ほんの数メートルの場所にいないと辻褄が合わな――」


 数メートルに、魔力。そして精霊であるウィルちゃんの持つ属性は――


 それに思い至ると同時に、私は半径十メートルほどの光を全部ねじ曲げました。ねじ曲げられた光のせいで景色がめちゃくちゃに見える中で、ただ一点だけ正しい景色を映す部分がぽっかりと浮かび上がりました。


「そこです!!」


 とっさにその部分に手を伸ばすと、手に触れたのは柔らかい感触。


「あうっ!」


 そんなかわいらしい声が聞こえた次の瞬間、それまで本当に姿を消していたウィルちゃんが、ハッキリと見えるようになっていました。ほっぺたがふにょっと潰れた状態で。


 どうやら私の手が触れた部分は、ほっぺただったみたいです。


 特に巨大化したわけでも成長したわけでもないいつもの姿のウィルちゃんは、悲しそうな顔でこちらを見上げました。


「うう、ウィルの負けですのー……」


 光を操ることが出来るウィルちゃんはその魔法を存分に使い、私たちから見えないようにしていたのでしょう。もし注意深く音を聞いていれば気づけたかもしれませんが、近くにルナちゃんがいたんじゃそれも難しかったでしょうね……なのでウィルちゃんの今の作戦は、いい線行っていたってわけです。


 こうしてウィルちゃんを見つけることに成功した私は、ウィルちゃんが持っていた最後の球をゲットすることができたのでした。


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